5月の広島サミットは「G7」の斜陽化を決定づける 世界の多極化はもはや止められない
G7(主要先進国)広島サミット(2023年5月19~21日)を機に、政権基盤の強化と自己の「レガシー」作りを託す岸田文雄首相。主要議題になるウクライナと台湾問題では、先進国間に隙間風が入りサミットの前途は多難だ。「斜陽クラブ化」するG7に代わり、多極化する世界秩序の姿が浮き彫りになりそうだ。
サミットの「プレ会合」として長野県・軽井沢でのG7外相会合が2023年4月18日に開かれ、閉幕後に発表された共同声明で、①「自由で開かれたインド太平洋」の協議定例化で合意、②ロシアに「軍のウクライナからの即時かつ無条件撤退」要求、③東・南シナ海での中国による一方的な現状変更の試みに「深刻な懸念」と「強い反対」を示し、「台湾海峡の平和と安定の重要性」に言及、で合意したと書く。
これを読む限り、サミットでの主要テーマになるウクライナ問題と台湾問題でG7の結束は揺るぎないように見える。しかし結論を急いではならない。
「アメリカに追従すべきではない」
外相会合に先立つ2023年4月初め、フランスのマクロン大統領は中国を訪問した。帰国途中の機内で行った欧米メディアとのインタビューで、彼は「ヨーロッパ諸国は欧州の利益を最優先し、アメリカに追従すべきではない」などと公然とアメリカに反旗を翻す発言をし、波紋を広げた。
外相会合では、コロナ・フランス外相が「フランスは現状の尊重および台湾海峡の平和と安定の維持に深い思いをもっており、力による一方的な現状変更に反対する」と、マクロン発言の火消しに追われた。
だがその後、2023年4月20日に行われたアメリカのバイデン大統領とマクロン氏との電話会談では、台湾問題でG7の亀裂が改めて表面化する。ホワイトハウスは電話会談について「台湾海峡の平和と安定を維持することの重要性を再確認した」と、双方が台湾問題で合意したと発表した。
一方、フランス大統領府のプレスコミュニケは、その部分について「インド太平洋地域全体で、航行の自由を含む国際法を支持」と書き、「台湾」を明示しなかった。訪中時のマクロン発言こそ、本音だったことを印象付ける。
それだけではない。フランス大統領府によると、マクロン氏は会談でウクライナ問題について、「中国は国連憲章の目的と諸原則に従い、中期的には紛争終結に資する役割を担っている」と述べ、「双方はこの目的のために、中国当局と関与を続ける重要性について一致した」と書くのである。
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