台湾有事で日米が中国に打ち勝つ「4条件」とは何か 敵基地攻撃能力など日本の安保3文書改定に符号

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2022年7月、中国軍の上陸に備えて演習を行う台湾軍(写真・2022 Bloomberg Finance LP)

アメリカのバイデン大統領は2023年1月13日、ワシントンでの岸田文雄首相との会談で、敵基地攻撃能力の保有と防衛費のGNP比2%増額など、日本の新たな防衛力拡大路線を「歴史的な増額であり、軍事同盟を現代化している」と絶賛した。

これに先立ち、アメリカのシンクタンクが台湾有事を想定した机上演習について報告書を発表。「対中戦勝利の4条件」として、日本と台湾が進める対中抑止力の強化策と具体的に符号する提言をした。中国側も報告でうたわれた自衛隊の関与に注目しており、中国と米日台による軍事的展開をうかがううえで「4条件」に着目したい。

中国軍の侵攻シミュレーション

報告書<「次の大戦の最初の戦い」(The First Battle of the Next War)>を2023年1月9日に発表したのは、対中強硬政策の最先鋒、いわゆる「アメリカ軍事・情報サークル」の一翼を担う戦略国際問題研究所(CSIS)だ。机上演習は、第3期習近平体制が終わる前年の2026年、中国軍の台湾本島上陸を想定。シミュレーションとして、アメリカ軍や自衛隊の関与の度合いに応じ、約1カ月間に及ぶ中国軍と日米台の戦闘シナリオを24通りに設定した。

戦闘は、中国軍の激しい爆撃やミサイル攻撃で始まり、台湾海軍と空軍は数時間でほぼ壊滅。中国軍は台湾を包囲し数万人の中国兵が上陸を試みた。台湾地上軍は海岸線で待ち構えて抵抗、中国軍は物資の補給と内陸への移動に苦しんだ。

「最も可能性が高い」シナリオでは、アメリカ軍の潜水艦や爆撃機、戦闘機が、自衛隊の支援を受けながら中国の強襲揚陸艦隊を無力化。大半のシナリオで、米日台側は台湾防衛に成功した。

しかし、戦闘は極めて悲惨な結果を招いた。アメリカ軍は空母2隻のほか10~20隻の大型艦艇、270機の航空機を喪失し多くの兵員を失った。自衛隊も112機の航空機を失うと想定している。

シナリオのすべてで、アメリカ軍は核戦争を避けるため中国大陸の基地への攻撃は控えた。中国は在日米軍基地を攻撃するものの、戦況に変化はないと予測している。

一方、人民解放軍は1万人が死亡し55機の戦闘機と138隻の大型艦船を喪失と推計。台湾軍は3500人が死傷、26隻の艦船を失い大きな経済的打撃を受けた。

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