台湾有事で日米が中国に打ち勝つ「4条件」とは何か 敵基地攻撃能力など日本の安保3文書改定に符号
これが概要だが、報告書は、①台湾有事では日本が参戦しアメリカ、日本、台湾が共同で戦う、②アメリカは何年にもわたって維持してきたアメリカの世界的地位を損ねる、③中国は台湾攻略に失敗すれば中国共産党による一党支配が揺らぐ、④台湾は電気などライフラインを失い経済的ダメージを受ける、などの結論を引き出した。これには、南西諸島を含めた日本の民間人の被害、台湾の被害にはいっさい触れていない。
さらに「1カ月」の戦闘後も終結せず、「数カ月ないし数年間継続するかもしれない」と長期化を予測している。報告タイトルが「次の大戦の最初の戦い」としたのも、それを物語る。結局、世界第1位から3位までの経済大国が総力戦を展開する「台湾有事」には、勝者も敗者もない悲惨な結末が待ち構え、「間尺に合わない」選択であることをわれわれに教えている。
台湾地上軍の強化が必須
報告書は24回のゲームを分析した結果、中国の侵略に打ち勝つための「4つの必要条件」を挙げた。4条件は台湾問題が米中対立の鋭いテーマになって以降、日本と台湾が次々に打ち出している、対中抑止力強化の内容とほぼ符合する。岸田政権による敵基地攻撃能力の保有や大軍拡路線も結局、アメリカ軍事・情報サークルの対日要求に「素直に従った」結果とわかるのがミソだ。
4条件の第1は、「台湾地上軍の強化」だ。報告は「中国軍はつねに台湾に上陸を試みるため、台湾の陸上部隊はいかなる上陸地点でも上陸を封じ込め、強力に反撃できる能力が必要」とした。同時に「台湾地上軍には大きな弱点がある。台湾は兵員を補充し厳しい統合訓練を行わなければならない」と提言している。
この要求に対応する台湾側の動きを挙げよう。台湾の蔡英文総統は2022年12月27日、18歳以上の男性に課している4カ月間の軍事訓練を事実上の兵役として1年に延長すると発表した。
決定には伏線があった。2022年7月に台湾を訪問したアメリカのエスパー元国防長官は、台湾側に「軍事予算倍増」と「1年の兵役義務化」を要求した。トランプ政権が台湾陸軍の主力戦車「エイブラムスM1A2戦車」の台湾供与を急いできたのもその一環だ。2021年春には、アメリカ陸軍顧問団が極秘で台湾・新竹の台湾戦車部隊に長期駐留し、台湾側の軍事訓練に当たった。「提言」はすでに実行に移されている。
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