全国8万社の神社を包括する神社本庁の政治団体・神道政治連盟(神政連)が、この4月に実施されている統一地方選挙で、LGBTQ(性的少数者)への理解増進や選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に反対することなどを求める公約書(政策協定書)を各自治体の候補者に送っていたことがわかった。岸田文雄首相がLGBT理解増進法案を今国会に提出したい姿勢を示す中でのことだ。
公約書を受け取った自民党県議らが東洋経済に明かした。受け取った候補者のうち、公約に「同意」して神政連の推薦候補となった人の数は不明だ。
2月、首相秘書官が性的少数者や同性婚について「隣に住んでいるのもちょっと嫌だ」などと発言したことに各界から反発の声が上がると、岸田首相は即刻、秘書官を更迭した。
LGBT理解増進法について「今国会に法案提出して成立を図るべきだ」(山口那津男・公明党代表)という与党の声にも押され、首相自ら、自民党に法案提出の準備を急ぐよう指示した経緯がある。
ところが、高市早苗経済安全保障担当相など自民党内にも慎重な声があり、国会提出は統一地方選挙後に持ち越される運びとなった。しびれをきらした経団連の十倉雅和会長は3月の会見で「恥ずかしい。法案を出すことで差別が増進されるとか、わけのわからない議論がなされている」と苦言を呈している。
そんな中で実施された統一地方選挙で、神政連はLGBT理解増進法案の国会提出機運に水を差すような公約書を候補者たちに送っていた。
「伝統的な家族制度の崩壊」
神政連が統一地方選挙の候補者に送っていたのは7項目の公約(冒頭の写真)だ。女性天皇につながる「女性宮家」創設への反対や憲法改正、宗教的情緒の涵養、首相や閣僚による靖国神社参拝などが挙げられている。
家族にかかわる政策については「伝統的な家族制度の崩壊につながりかねない選択的夫婦別氏(姓)制度の導入に反対し、その対処策として、旧姓の使用拡大に努めます」、「各自治体におけるパートナーシップ制の制定等の動向を注視するとともに、民法で定める法律婚を大事にしてその意義啓発に努めます」などと記されている。
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