神社庁が統一地方選候補に送りつけた「公約書」 「LGBT理解増進法案」国会提出の機運に水を差す

✎ 1〜 ✎ 21 ✎ 22 ✎ 23 ✎ 24
拡大
縮小

神政連の公約書を受け取った一人で、4月16日実施の埼玉県議会選挙で5期目の当選を果たした自民党の田村琢実埼玉県議は、「神政連から公約書が送られてきたのは今回の選挙が初めて。これまで一度もなかったのに、今回送られてきた理由はわからない」と首をかしげる。

埼玉県議会は2022年の議会で、性の多様性(LGBTQ)条例を可決した。可決前に実施されたパブリックコメントに際しては、神政連埼玉県本部の役員会で「事務局長が役員たちにパブコメで『反対意見を投稿するように』という趣旨の呼びかけをしていた」(埼玉県神社庁幹部)という。

条例制定に中心的な役割を果たした田村県議は、右翼団体の街宣車から「夫婦別姓推進の田村琢実は反保守活動家」などと“口撃”された。神政連の公約書にも同意しなかったため、推薦候補にはなっていない。

田村県議は「LGBTQの当事者たちは、(現行の)制度によって苦しんでいる。困っている人を助けるのが政治の役割なのだから、条例制定は政治家として当然のこと」と語り、こう続ける。「反対する人たちは、単に理解をしていないだけ。LGBTQを認めると国が壊れるという意見があるが、同性婚や夫婦別姓を認めている国が壊れたでしょうか」。

同性愛は「ギャンブル依存症と同じ」

神政連は、世界平和統一家庭連合(旧統一教会)と並び、LGBTQに強力に反対してきた組織だ。2022年6月には、LGBTQの理解について大きな反発を受ける騒動があった。物議を醸したのは自民党の神政連国会議員懇談会で配布した「夫婦別姓 同性婚 パートナーシップ LGBT」と題した冊子に掲載された楊尚眞・弘前学院大学教授(当時)の講演録。

講演録には、同性愛について「後天的な精神の障害、または依存症」「同性愛行為の快感レベルが高くてなかなか抜け出すことができないのは、ギャンブル依存症の人が沢山儲けた時の快感を忘れられず、抜け出せないのと同じなのです」などと記されていた。

神道政治連盟が作成した冊子にはLGBTQへの差別的な言葉が並ぶ(編集部撮影)

これに対してLGBTQ当事者らによる抗議署名は5万筆を超え、自民党本部が抗議を受ける格好となった。本件について神政連は東洋経済の取材に「抗議は冊子自体に対するものではなく、楊教授の講演録の一部の表現に対してではないでしょうか」などと回答している。

次ページ矛盾する議員らの主張
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT