株式を保有する投資家としては、投資先企業の経営に一般的に必要なROE以上に相当する利益が予想され、株価がPBR1倍を超えて「経営の付加価値」がある状態の株式を保有しているのが気持ちいいに違いない、と拝察する。
一方、投資先が十分なROEに相当する利益を稼ぐ見通しがなく、PBR1倍を割れている状態なら、「ふがいない経営だ」と思っているかもしれない。
高PBR銘柄も低PBRも両方に分散投資せよ
しかし、それぞれの見通しを十分に踏まえた株価が形成されていたらどうだろうか。前者の企業では株価が1株純資産に対して高く、後者の企業では安く形成される。それぞれの株価で保有している現時点の投資にあって、どちらの期待リターンが高いということでもない。
投資家は、PBRが高い銘柄も低い銘柄も両方に分散投資して、じっと持っていればいい。PBRが高い銘柄、低い銘柄にはそれぞれの事情があり、もともとわかっていることだ。
一般論として、上場企業が有効に再投資できるあてもなく現預金などを貯め込んでいる状態は、上場企業への期待に応えているとは言いがたい。株主の側からは「有効に使うアテがないなら、そのお金は株主に返してください」と言いたくなることには一理あるので、証券取引所が「注意を喚起」してみるくらいのことはギリギリあってもいいだろう。
ただし、自社株買いも、アメリカの企業に典型的に見られるように経営者が自らストックオプションを持ってからやるようになると、株主(=資本家!)を搾取する詐欺に近い状況になるので、「やりすぎ」には注意が必要だ。
証券取引所として「PBR1倍割れを早く解消してください」というところまで踏み込むのであれば、明らかにやりすぎであり、お節介だ。
なお、冒頭の若手証券マン君には、ウォーレン・バフェット氏の投資法をもっとしっかり勉強することを強くお勧めしたい。通俗的には「自分にとってよくわかるビジネスで、かつ株価が割安な企業に投資する」バリュー投資がバフェット氏の投資法だと説明されることがあるのだが、今のバフェット氏は「安ければ何でもいい」という投資家ではない。
彼は、長期的な保有を可能にする「企業の競争力やブランド価値」を重視している。その証拠に、これだけ割安株らしき株価の上場企業があふれている日本企業の中で、彼が現時点で大きく投資していることが明らかなのは、大手商社5社だけである。
顧客に勧める「次のバフェット銘柄リスト」には、もうひとひねりが必要だ(本件はここで終了です。次ページは競馬好きの筆者が週末のレースを予想するコーナーです。あらかじめご了承ください)。
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