ただ、平時から「IRで忙しい」とか「IRで株主や投資家の声を聞くことが参考になる」などと言っている社長は例外なく二流以下だ。コンサルタントに踊らされているにすぎない。IRコンサルタントのビジネスは、「PBR1倍割れ」の企業を食い物にすることが1つの狙い所だ。
もう1つの狙い目は、自社株買いのための資金調達のアレンジだ。企業は「内部留保」をため込んでいると言われても、それがすべて現預金であるわけではない。自社株買いをしたいと思っても、手元不如意な場合が少なくない。かと言って、経営者は銀行から借金をしてまで自社株買いをしたいとは思わない。
本物の上場経営者なら「見識」を持て
ここで証券マンなら、経営者の耳元で、「自社株買いを行えばPBR1倍割れは解消できます」、「これは東証の意向に沿うことであり、世間的にも解散価値割れの株価は見栄えがよろしくありません」、「資金の調達と自社株の買い付けは弊社がセットでお手伝いしますので、安心してお任せください」というくらいのことをささやくといい。
複雑な株式転換権が付いた債券を発行させたら、企業の100億円の調達に対して、数億円レベルの実質的な手数料を獲得することができるはずだ。
そう。新橋の居酒屋で証券マンの先輩が言っていたのは、この種の「チンピラ・ファイナンス」だ。「チンピラ」とまで決めつけるのは、財務に弱い経営者をターゲットにした、ボッタクリ・ビジネスだからだ。
いや、むしろ、財務には多少の心得があると自認する経営者やCFO(最高財務責任者)のほうが引っ掛けやすいのかもしれない。ビジネス一般に言える傾向として、半分プロ気取りの半可通の素人は格好のカモである。どうか、上場企業経営者の皆様にはこの種の提案を堂々と無視する見識を持っていただきたい。
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