もっとも、会社の資産は会計上の価値(簿価)で換金できるとは限らない。換金しにくい設備や、今は大した価値のない不動産だったり、その会社でしか有効でない特許などの権利であったりするし、それらの換金にもコストがかかるし、会社を止めるためには、従業員にお金を支払うなどの必要がある。
むしろ、帳簿上の価値では換金できない場合が多いだろう。もちろん、経営者も従業員も会社をストップして清算したいとは思っていまい。
換金性が高い資産が多い企業は狙われやすい
ただし、資産の大半が、そもそもお金になっている現預金だったり、換金しやすい上場株式だったり、といった場合には、「この会社を買収するコストよりも、得られる現金が多い」との意図から株式の買い占めを狙われる可能性はある。買い占めて本当に解散しても計算が立つし、その前に「多額の配当や自社株買いなどで現金を吐き出させたらいい」との計算が、買収者側では立つ。
株式を上場しているということは、本来は、「誰に株式を持たれても文句はありません」ということでなければならないので、この場合、買い占め屋が悪いわけではない。ぼんやりと上場している状態が些か不用意なのだ。
昨今でも、この種の会社は狙われやすい。大量の株式を手元に持ってしまうと市場では大きく株価を下げずには売りにくいので、MBO(経営者による企業買収)を目指したTOB(株式公開買い付け)などを要求して、株式を市場外で引き取らせようとすることもある。
「悪いことを考えるものだ」と言いたいかもしれないが、これが株式というものと、上場というものを合わせた時の「ゲームのルール」なのだ。
経営者が上記のような状況に追い込まれたくないと考えたときに、最もオーソドックスな方法は株価を上げることだ。1株当たりの純資産価値よりも、高い株価がつくようにするといい。
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