外国人が気がついた「日本の空き家」圧倒的な魅力 問い合わせが3年で5倍に増えた不動産業者も

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2019年にこの農家を購入して以来、夫妻は約15万ドル(約2000万円)をかけてリノベーションを行ったが、まだまだやることはある。ジャヤさんはこのプロジェクトをYouTubeで公開しており、20万人以上の登録者を集めている。

サーズフィールド夫妻の家は、前所有者の相続人によって放棄されていたが、中には相続人を指定しないまま亡くなる家主もいる。また、ほかの所有者は、高齢の家族への敬意から土地を売ることを拒む親族に不動産を残し、その結果、家は老朽化していく状態になっている。

改装後の室内(写真:The New York Times)

なかなか家と土地を捨てられない日本人

「地方では、先祖代々の持ち主が家と土地に住み続けてきた歴史があります」と、鳥取大学の筒井一伸教授(農村地理学・地域経済論)は語る。同教授は、100年以上前に建てられた空き家を改築して住んでいる。「だから、都会に出てきても、家族は空き家を簡単には手放さないのです」。

現在、地方自治体や国のレベルで、問題解決のための取り組みが進められている。

「保存状態が悪い空き家は、景観を損なうだけではなく、倒壊して住民の生命や財産を危険にさらすことになります」と、酒田市の市職員、ナガオ・カズヒロさんは指摘する。この地域では、大雪が放置された建物に損傷を与えることがある。「解体費用を一部補助し、町内会で空き家に関する報告書を集め、説明会を開いて物件の所有者に問題意識を持ってもらうようにしています」。

空き家は、郊外や地方の市場に対する脅威としてだけでなく、国家の精神的健全性に対する脅威としても認識されつつあり、相続財産をめぐる家族間の紛争を引き起こすこともある。これが「空き家活用」の和田貴充CEOのような、空き家コンサルタントの仕事が生まれる要因となっている。彼は、いがみ合う親族の相談役として、しばしば財産が失われる前に行動を起こすよう促している。

「親が実家に関する意思を明確にしないまま亡くなったり、認知症になって話し合いが難しくなったりするケースは少なくありません」と和田さんは言う。「このような場合、子どもたちは実家を処分することに罪悪感を抱き、空き家のまま放置することを選択することが多く見受けられます」。

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