朝ドラ「らんまん」安定感だけでは物足りないワケ 前2作に欠如していた「現実感」「躍動感」を

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『らんまん』ロケの神木隆之介(写真:高知新聞/共同通信イメージズ)

NHK連続テレビ小説(朝ドラ)『らんまん』が立ち上がった。高知県出身の植物学者・牧野富太郎の人生をモデルとしたストーリー。

安定感のある立ち上がりだったと言えよう。私が「安定感」を感じた理由を3つ。

1つは「歴史物」という点だ。やはり「現代物」よりも「歴史物」の方が落ち着くという感覚が私にはある。昨年度の『ちむどんどん』と『舞いあがれ!』は、いわゆる「現代物」だった。対して『らんまん』は、慶応3年(1867年)、つまり幕末から始まった。この古さは2015年の『あさが来た』以来だ。

また、実在のモデルがいることも、ある程度の展開が読めるという意味で「安定感」につながる。歴史的偉人の一代記は、浪花千栄子をモデルとした『おちょやん』以来5作ぶり。また、植物学者・牧野富太郎という、大きな功績を遺した人物がモデルということも安心できるところ。

神木隆之介の持つ安定感

だが、最大の「安定感」要素は、主人公・万太郎役に神木隆之介を据えた点だ。妙な言い方になるが、「この朝ドラ、大失敗はないだろう」と思わせる力が、神木隆之介には備わっている。演技力、躍動感、そして独特のキュートさ。私は早くも、大船に乗った気持ちになりつつある。

「大失敗」と書いたが、今の朝ドラは「失敗」が「大失敗」になる時代に立ち向かっている。視聴率は下がったとはいえ、まだまだ国民的なコンテンツの朝ドラ。寄せられる期待も過剰。だから、ちょっとしたマイナスが、SNSで叩かれていく中で大きなマイナスとして膨張し、それが世間の共通認識となる。その典型が、例の「#ちむどんどん反省会」なのだが。

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