賃上げでも「離職が減らない」残念な会社の盲点 ハーバードで学ぶ従業員満足度を高める方法

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

あるいは、従業員満足度が上昇したとしても、それがWTPの向上につながらないというケースもあります。この場合、価格上昇分はWTPの増加で吸収されないため、顧客歓喜は減少します。これも賃上げによる失敗のパターンになります。

賃上げで成功するポイントとは

したがって、賃上げで成功するためのポイントは次の2点になります。

① 従業員満足度が十分に増加する
② 従業員満足度向上がWTP増加につながる

このなかで②が最も重要です。賃上げをするのであれば、それがWTPの増加につながらなければいけないのです。そうでなければ賃上げを見合わせた競合他社に負けることになります。あるいは、売り上げを維持するのであれば、価格を据え置き、その分、利益率を犠牲にすることになります。これも賃上げして失敗するパターンに該当します。

従業員満足度がWTP向上につながるためには、まずは①が必要条件となります。つまり、従業員満足度が十分に向上することが求められます。ブラック企業で報酬に不満をもっている従業員にとって給与が多少増加しても、不満であることには変わりません。よりよい転職先が見つかれば、真っ先に離職することになるでしょう。この場合、賃金の上昇はWTP向上には絶対に結びつきません。

もちろん、賃上げ幅には制約があり、十分な賃上げができない場合もあるでしょう。しかし、ここで留意していただきたいのが、従業員満足度とは、報酬とWTSの差額であるという事実です。報酬が少ししか上がらなくても、それ以上にWTSを下げれば従業員満足度は増加するのです。

WTSを下げるとは、一言でいえば職場環境を魅力的にするということです。危険できつい仕事であればそれを埋め合わせるために従業員のWTSは増加します。しかし、安全で快適な環境で仕事ができるなら、WTSは減少するでしょう。教育・キャリア開発の機会の充実などもWTSを下げることになります。

あるいは、職場の場所も重要です。地方で先祖代々の土地・家屋があり、そこから離れることができない人がいたとしましょう。そのような場合、家から通勤できる範囲内に職場があるならば、多少給与が低くても満足して働くでしょう。というのも、家から通勤できるということが彼のWTSを著しく下げることになるからです。

このように何らかの方法でWTSを下げるように努力することが求められます。この努力を伴わない賃上げは失敗に終わる可能性が高いことを肝に銘じる必要があるでしょう。

次ページWTPを高めるには
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事