安すぎる「日本の初任給」最低賃金のたった1.31倍 大幅に引き上げて「若い人の夢」を取り戻そう!

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日本の大卒男性の初任給は、東京の最低賃金の1.31倍程度でしかないと先ほど紹介しましたが、日本の経営者は、大卒男性にはその程度の給料しか払う価値はないとみなしているのでしょうか。

逆に考えると、日本の大卒男性は昔に比べると、大幅に価値が劣化していることを意味しますが、本当にそうでしょうか。

最低賃金に対する倍率がここまで下がると、最低賃金が高すぎるか、大卒の初任給が低すぎるかのいずれかということになります。最低賃金の国際比較からすると、最低賃金の水準が高すぎるという結論は、とても正当化できません

かつての水準に戻すと大卒31万円、高卒25万円が妥当

大卒男性の初任給を最低賃金の2倍まで戻すとすると、現状の23万円ではなく、31万円が妥当な水準となります。高卒男性もかつての1.70倍に戻すためには、現状の19万円から、25万円にまで引き上げなければなりません。

女性も含めて、若い人は最も消費性向が高く、国の将来を決定する年齢層です。そんな彼らがここまで犠牲にされていることは、本当に情けないです。

ちなみに、ここで大卒男性のデータを使っているのには、もちろん理由があります。データの整合性を担保するためです。

日本では、1990年以降、人口が減っているのに、労働参加率は大幅に向上しています。そのなかで、賃金水準が相対的に低い高齢者や女性の雇用が急増しています。

このように雇用の中身が変化したため、国全体の平均賃金の推移をそのまま分析に使うと、誤った結論になります。つまり、雇用の中身の変化の影響を排除するために、大卒男性の初任給データを使っているのです。

最低賃金というのは、地方自治体ごとに異なる基準で決定されていて、政府が直接決めているわけではありません。しかし、しばらくは上昇圧力がかかり続けることが予想されています。

そうなると、大卒男性の初任給が一層、最低賃金に近づいていくことになります。このまま推移すると、最低賃金の引き上げが、大卒初任給に対する引き上げ圧力になるという、奇妙な事態にもなりかねません。もしそんなことが起これば、あまりに悲しく、そして情けない話です。

『給料が上がらない会社』はいますぐお辞めなさい」でも指摘したとおり、政府は賃金の引き上げを要求しており、大企業でも中小企業でも内部留保が激増しているのにもかかわらず、経営者は初任給を上げてきませんでした。ここからは「経営者の本質」を読み取ることができます。

次ページ内部留保が積み上がっても給料を上げない「経営者の本質」
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