安すぎる「日本の初任給」最低賃金のたった1.31倍 大幅に引き上げて「若い人の夢」を取り戻そう!

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

政府は最低賃金を引き上げて、企業にも賃上げを求めています。しかし民間企業の経営者は、政府の意図どおりには動いていません。多くの経営者は、給料を増やそうと努力していないように、私の目には映ります。

日本では今後何十年も人口が増えないので、1人ひとりの賃金が上がらないことには個人消費は増えません。当然、経済の成長は止まったまま、徐々に衰退していきます。

大卒男性の賃金が上がらないことは、日本経済の停滞の最大の原因になりかねない大問題なのです。

政府が継続的に最低賃金を引き上げて、初任給を引き上げさせることによって、その上の世代の給料も引き上げさせるべきです。

このように主張すると、間違いなく「最低賃金を引き上げては、中小企業が潰れるぞ」と反論が出るでしょう。しかし先ほども説明したように、最低賃金は2016年以降、2020年を除き毎年3%以上引き上げられています。しかし、それによって中小企業の倒産が続出したという事実はありません。この反論は、明らかにデマと言わざるをえません。

そもそも、人口が減少している中で、日本の若い人の賃金を抑えて、日本経済の成長を犠牲にして、初任給を上げるための経営戦略を実行しない経営者を守る理由はあるのでしょうか。私には、とてもそうとは思えません。

イノベーションを起こせる経営者を探し、転職しよう

経済成長はイノベーションなしには実現しません。そして賃金も、イノベーションがなされなければ上がりません。つまり、日本で過去30年にわたって賃金が上がらなかったのは、この国では目覚ましいイノベーションが起きてこなかったことを物語っているのです。

イノベーションを促す政策は別として、賃金はマクロ政策によって決まることはありませんし、消費税廃止や政府支出によって賃金を上げることもできません。

賃金はイノベーションによってのみ上がります

前回記事「データが示す『転職が日本人の給料を上げる』根拠」でも説明したとおり、もはや転職を躊躇する理由はありません

日本企業の経営者は現状維持にばかり腐心して、労働者が貧困に陥ることに関心を寄せていないように感じることすら多々あります。しかし、皆さんがそんな横暴な経営者の怠慢と慢心の犠牲になる必要はどこにもありません

いま勤めている会社の経営者の実力やビジョンを見極め、イノベーションを起こせないようであれば、とっとと見切りをつけるべきです。同時に、イノベーションを起こして継続的に給料が上げられる企業を真剣に探して、転職に向けて動き出すべきです。

もちろん、そのためには自分の相場を見極めたり、イノベーションの実現可能な会社を見つけ出したり、また、そういった会社に採用してもらうために自分を磨いたりと、やらなくてはいけないことは多々あります。しかし、そうでもしないかぎり、皆さんの給料は上がりません。これが現実というものです。

皆さんが、積極的に行動し、自分にふさわしい会社を見つけ、転職することによって、解雇規制緩和をしなくても、日本でも労働市場は活性化します。そうなれば、日本経済はおのずと元気になるのです。

デービッド・アトキンソン 小西美術工藝社社長

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

David Atkinson

元ゴールドマン・サックスアナリスト。裏千家茶名「宗真」拝受。1965年イギリス生まれ。オックスフォード大学「日本学」専攻。1992年にゴールドマン・サックス入社。日本の不良債権の実態を暴くリポートを発表し注目を浴びる。1998年に同社managing director(取締役)、2006年にpartner(共同出資者)となるが、マネーゲームを達観するに至り、2007年に退社。1999年に裏千家入門、2006年茶名「宗真」を拝受。2009年、創立300年余りの国宝・重要文化財の補修を手がける小西美術工藝社入社、取締役就任。2010年代表取締役会長、2011年同会長兼社長に就任し、日本の伝統文化を守りつつ伝統文化財をめぐる行政や業界の改革への提言を続けている。

この著者の記事一覧はこちら
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事