なぜ中国人は日本で「便座」を爆買いするのか 来日して買っていく商品第3位!

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今年2月、中国の人民日報で日本の温水洗浄便座の人気ぶりについて取り上げている文章があった。そこには「消費者は国内製品では満足を得られていない」とあり、「日本を見習い、われわれは技術革新を重視すべきだ」と、日本を持ち上げる異例の内容が書かれていた。

中国人だって、汚いトイレに困っている

振り返って、母国・中国での日々の暮らしは「ストレスの塊」(日本在住経験のある中国人の友人)だ。中国での生活の不便さを上げ出したら切りがないが、中でも最もストレスのたまる場所が“トイレ”だ。

上海の4つ星ホテルのトイレ。比較的きれいだが、温水洗浄便座はまだ設置されていない

特に公共の場(地下鉄駅構内やショッピングセンターなど)のトイレは鍵が壊れている、流れが悪い、洗面台の水が出ない、トイレットペーパーがない、床が水浸し……等々、その汚さには“定評”がある。

最近、北京や上海ではものすごい勢いで、公共トイレも整備されてきてはいるのだが、地方都市にいけば、中国人でも我慢ならないほどだ。

中国人はあんなトイレでも平気なの?と聞いてみると、彼らも顔をしかめながら首を横に振る。彼らは家のトイレはとてもきれいにしてあり、公共トイレが汚い分、せめて家庭のトイレでは快適に過ごしたいと思っているのだ。そうしたこともあって、日本で売っている日本製の温水洗浄便座を買って帰るのである。

2010年、中国はGDP世界第2位の国になったが、日々の暮らしやソフト面では、まだとても日本には追いつけないし、「おカネはあってもモノが買えない」いらだちやストレスを抱えている。そんな中国人の心の裏側は、なかなか日本には伝わらない。富裕層であっても、内心では日本にあこがれ、日本人のような生活がしたいと思っているのだ。

そんな中国人を突き動かしているのが、昨今の「爆買い」現象なのであり、日本の暮らしの象徴的存在が、温水洗浄便座なのである。

 

中島 恵 ジャーナリスト

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なかじま けい / Kei Nakajima

山梨県生まれ。北京大学、香港中文大学に留学。新聞記者を経て、フリ―に。著書に『なぜ中国人は財布を持たないのか』『中国人エリートは日本人をこう見る』『中国人の誤解 日本人の誤解』(すべて日本経済新聞出版社)、『なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?』『中国人エリートは日本をめざす』(ともに中央公論新社)、『「爆買い後」、彼らはどこに向かうのか?』(プレジデント社)などがある。

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