中国渡った「シャンシャン」輸送会社が明かす苦労 返還ラッシュで中国ではパンダ熱が高まる

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1984年10月に日本に初めてコアラが輸入された際も、阪急阪神エクスプレスが輸送を担当した。

仲嶋さんは「当時コアラは生きたぬいぐるみといわれ国賓並みの扱いでした。成田から多摩動物公園への輸送は、パトカー2台を従えての7台編成となりました」とフィーバーぶりを語る。

そんな動物輸送のプロ集団で、パンダ好きには知られた存在である阪急阪神エクスプレスにとっても、今回のシャンシャン輸送は大きなプレッシャーを感じる業務だったという。

当初の返還期限はコロナ禍真っただ中の2020年末。その後も感染は収まらず、5回にわたって延期された。

返還の動きが具体化し始めた昨年秋時点でも、中国はゼロコロナ政策を続け出入国を厳しく制限しており、中国から専門家が来れる状況ではなかった。日本と中国を結ぶフライトも大幅に減便されていた。

さまざまな制約の下、阪急阪神エクスプレスが選択したのは貨物専用機のチャーターだ。旅客機だとスタッフは客席、シャンシャンは貨物スペースと分かれるため、飛行中にシャンシャンの様子を確認できないが、貨物機なら同じ空間で過ごすことができる。シャンシャンが不安がらないよう近くで見守りたいという動物園側の希望にも沿っていた。

「返還に関われるのは大きな名誉」

阪急阪神エクスプレスは順豊航空(SF エアラインズ)の貨物機を手配した。同社は中国最大の宅配グループ「順豊(SF)」の航空貨物部門で、中国国内でイルカやアザラシを輸送したり、中国―モンゴル間で羊4000頭を輸送した経験はあるものの、パンダは初めて。仲嶋さんは「不安はあった」と本音を漏らした。

SFの日本法人「ケリーロジスティクスジャパン」経営企画部の李軍さんは、「国宝に匹敵するシャンシャンの返還に関われるのは大きな名誉」としつつも、「貨物機でのパンダの輸送は欧米では例があるが、日本ではおそらく初めて。昨年9月に準備が始まってから、中国の本社、政府機関、阪急阪神エクスプレス、日本の関係機関などとやり取りしたメールは1万通を超える。大変複雑な業務だった」と明かす。

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