中国渡った「シャンシャン」輸送会社が明かす苦労 返還ラッシュで中国ではパンダ熱が高まる
最も大変だったのは、上野動物園のスタッフを貨物機に同乗させるための手続きだった。
阪急阪神エクスプレス動物輸送チームの南節さんも、「特に上野動物園様の飼育係の方が、チャーター手配の貨物専用機に同乗できるか否かに最も労力を費やしました」と述懐しており、動物園のスタッフも含めて当事者が最も苦労し、気をもんだことだという。
李さんによると、貨物機に乗る動物園のスタッフは乗務員扱いとなるため、中国の決まりで空勤登機証を取得しなければならない。しかし中国の貨物機に外国籍の乗務員が搭乗した前例がなかったため、航空行政を管轄する中国民用航空局(民航局)もどういう手続きや書類が必要か、明確に答えられなかった。
求められる書類の形式や取得方法もあいまいなことが多く、日本の警察や外務省に相談し、大量の書類をそろえながら、動物園のスタッフに乗務員として必要なトレーニングを行った。
「同乗できる動物園のスタッフは2人でしたが、新型コロナウイルスに感染したときのことを考え、計5人を乗務員として登録することにしました。空勤登機証取得の道筋が誰もわからなかったため、皆不安でした」(李さん)
取得のメドが立ったのは年末。そこから急ピッチで返還スケジュールが固められた。
着陸もいつもより丁寧に
実際の輸送は、シャンシャンファーストを徹底した。SFエアラインズの貨物機は通常、中国を朝出発し、昼に日本で貨物を積んで夕方中国に向かう。
だが、シャンシャンの成田空港での待ち時間を最小限にするため、前日のうちに機体を成田空港に運び、パイロットらは空港周辺に一泊した。不測の事態に備えて搭乗機と同じB767型機2機を予備機として待機させてもいた。
到着地の成都の天気予報が雨だったため、日本を飛び立った後も李さんの緊張は解けなかった。
シャンシャンの移動は中国でネット中継され、大勢の視聴者が見守っていた。パイロットは普段よりも「丁寧に、丁寧に、丁寧に」(李さん)着陸し、成都の空港の税関・検疫は優先対応してもらったという。
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