最初からアイドルとして崇高な志があるわけではなかった。しかしそれでも、人よりも努力することだけはやめなかった。
最初のアイドル活動を辞退してからも体型維持のためのトレーニングを続け、チャンスを待った。2013年、高校3年の秋、それはやってきた。
ビクターエンタテインメントからメジャーデビューしている「トーンジュエル」に研修生として加入することになる。
大阪を拠点としていたため、福岡と大阪を往復する日々がはじまった。
授業終わりに空港へ直行、大阪でレッスンをこなし、また福岡へ戻る。月に10日間はそんな日々を送ったという。
仲間に裏切られる日々
高校を卒業してすぐに上京し、事務所の寮生活に入った。そして2014年3月には、同期の研修生4人と一緒に、再びアイドルデビューを果たす。
しかし、ここでも「辛い出来事」が彩瀬を襲う。
デビューしてすぐにメンバーが一人辞め、また一人辞め。
その年の11月、ついには一番仲のよかったメンバーが何も言わずに飛んでしまった。ある日突然音信不通となったのである。
金融では俗に「借金で飛ぶ」などと使われるが、アイドル業界でも突如としていなくなることを「飛ぶ」と言う。
「この時はほんと辛くて、アイドルを続けるとか、もうそういう次元の話じゃなかったです」
当時のことを聞かれ、どこか寂しそうにこう語った。信頼していた仲間に裏切られたのだ。
それは彩瀬にとってはじめての経験であり、そのショックは計り知れなかった。
当時、トーンジュエルの楽曲制作スタッフをしていた、現TJプロデューサーの冠野亮太氏も、その時のことをこう振り返る。
「(彩瀬から)『もう探さないでください』ってLINEが来るんです。それで探しに行ったら、公園でひとり佇んでいるようなことが何回もあって。ほんと心配でしたね」
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