アメリカが「建国の理想」ゆえに自壊する理由 自由民主主義の維持に潜む恐怖のパラドックス

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おわかりでしょうか。

内戦を防ぐという観点に立つかぎり、中途半端に民主化された体制よりは、徹底した権威主義のほうが望ましいのです!

民主主義、とりわけ自由民主主義を「普遍的価値」と見なし、全世界に広めたがる傾向が強まった20世紀末、内戦がかつてなく生じるようになったのも、こう考えれば必然の帰結にすぎません。

 

とくに危ないのが、社会の基盤が不安定なまま、急速な民主化を推進したがる国々。

エドマンド・バークは『フランス革命の省察』で、「急激な変化は、たとえ良いものであっても望ましくない」という旨を論じましたが、ウォルターの議論はこれを完全に裏付けています。そして「民主主義をめざしても、かえって物事が悪くなるだけだった」という幻滅が、自由民主主義の否定をうながすことになるのです。

没落と絶望が暴力を呼ぶ

ただし不完全民主主義、アノクラシーだからと言って、必ず内戦になるわけではない。

次のポイントは、当該の国に、それまで享受していた地位や特権を失い、没落(日本語版では「格下げ」)の危機に直面した社会集団がいるかどうか。

 

当の集団にとって、世の中は「ひどい右肩下がり」にしか見えない。

強い不満を抱いて当たり前。

しかも新たにのし上がってきた社会集団が、民族・宗教・言語などの点で、自分たちと違っていたらどうなるか?

 

──われらが祖国は、異質なよそ者によって乗っ取られようとしている! 国の「純潔」を守れ!

こんな心情が広まっても不思議はありません。これをあおることで、権力を得たり、あるいは維持したりしようと画策するのが、先に出た「民族主義仕掛人」。

 

だとしても、没落する側の人々の抱く不満や不安について、政府が取り合う姿勢を見せれば、最悪の事態にはならない。

平和的な陳情や抗議によって、物事が改善される道が残っているためです。

だが、政府が取り合わなかったらどうなるか。

 

──もはやこれまで、蜂起あるのみ!

今度はこんな心情が広まることになります。むろん自由民主主義への信頼など、とうに消え失せている。

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