アメリカが「建国の理想」ゆえに自壊する理由 自由民主主義の維持に潜む恐怖のパラドックス

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国の持続的発展なる大義を持ち出すことで、「内戦を防ぎたければ移民増加を阻止すべきでは」という反論を封じこもうとした次第。

けれども没落し、絶望に沈んだ白人に、この言葉がどう響くか想像できますか?

こうです。

「お前たちの不満には取り合わない。移民や難民の受け入れは続ける。白人は少数派に転落する運命なのだ。それを拒めば『死』あるのみ!」

 

ひょっとして、バーバラ・ウォルターも「暴力対決仕掛人」なのか?

そんな気がしてくるではありませんか。

『アメリカは内戦に向かうのか』は最後になって、同国の自壊を食い止める道を示すどころか、本そのものが自壊してしまうのです。

このパラドックスは他人事ではない

ただしこれは、本書の価値を否定するものではない。

否、みごとに自壊しているからこそ、『アメリカは内戦に向かうのか』には大きな意義がある。

現在の世界において、自由民主主義の維持にいかなるパラドックスがつきまとうかを、身をもって示しているからです。

 

日本語版の冒頭に添えられたメッセージで、ウォルターが語っていることは、その意味で本人が考える以上に正しい。

いわく。

「ここで述べられていることは、私たちの世界を取り巻く真実の姿にほかなりません。それらが日本で生活する皆様にとっても、遠からず訪れる未来であることは否定できません」(3ページ)

 

本書の破綻を乗り越えることができるかどうか、それはわれわれにとっても、国の運命を左右する巨大な分岐点となるのです。

佐藤 健志 評論家・作家

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さとう けんじ / Kenji Sato

1966年、東京都生まれ。東京大学教養学部卒業。1989年、戯曲『ブロークン・ジャパニーズ』で文化庁舞台芸術創作奨励特別賞。1990年代以来、作劇術の観点から時代や社会を分析する独自の評論活動を展開。『平和主義は貧困への道』(KKベストセラーズ)をはじめ著書・訳書多数。またオンライン講座に『痛快! 戦後ニッポンの正体』(経営科学出版)、『佐藤健志のニッポン崩壊の研究』(同)がある。

 

 

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