「シエンタ/ノア/セレナ」日本人が箱車を好む訳 世界的なSUV人気の今、ミニバンが売れる

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アルファードの2列目シート
広々としたアルファードの2列目シート。写真は2代目ではなく現行モデル(写真:トヨタ自動車)

トヨタのアルファードが2代目から実用化した、2列目の座席を大きく後ろへ移動させたときの足もとの広さ、そして高い天井を含めた贅沢な気分は、ストレッチリムジンでさえ味わえるものではない。

同様に後席の移動量は、軽自動車のハイトワゴンやスーパーハイトワゴンでも適用され、後席を最も後ろへ下げた状態で座ると、登録車を選ぶ理由が薄れるほど快適な空間を味わえる。しかも、登録車のコンパクトカーや小型車に比べ、軽自動車は税制など経済性で有利だ。さらにハイトワゴンの軽EVまで発売となり、販売は堅調だ。EVともなれば、静粛性に加え走行中の乗り心地も、もはやコンパクトカー以上といえる上質さが得られる。

整備された日本の道路環境も大きな要因に

ノア/ヴォクシー
天井も高く、ゆとりのあるノア/ヴォクシーの車内(写真:トヨタ自動車)

アメリカでは、ストレッチリムジンに代わる車種として、SUVが選ばれている。一方、アメリカに比べて日本は、未舗装路を走る機会が限定的だ。アメリカは、市街地を離れると、まだまだ未舗装の道や土地へ入ることがあり、その点で、ミニバンよりSUVのほうが高級車の姿としても適しているだろう。

そのうえで、SUVと同様にミニバンやハイトワゴンは、運転席からの目線が高く、遠くを見通しやすい。先がよく見えるので安心という気持ちをもたらすに違いない。SUVやミニバンなどの人気は、運転を必ずしも得意としていない人に、視覚的安心をもたらす面もあるはずだ。

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当然ながら、ミニバンやハイトワゴンは、天井が高く、床が低いことによって、室内空間はSUVの比ではなく広々としている。単なる居住空間というだけでなく、物を載せたり、子供の世話をしたりというように、車内でいろいろなことをやりやすい。高齢者にとっても、腰をあまりかがめずに乗り込めることは、乗降を苦痛に思わせずに済む。

限られた土地に多くの人が住む日本の暮らしに最も適しているのが、ミニバンやハイトワゴンといえ、広大な土地が広がるアメリカや、必ずしも広大な国土ではなくても、人口が分散してゆとりある暮らしのできる欧州とは、別の要望がクルマにあるということだろう。

したがって、日本のミニバンやハイトワゴンに対する需要は、この先も堅調なのではないか。

御堀 直嗣 モータージャーナリスト

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みほり なおつぐ / Naotsugu Mihori

1955年、東京都生まれ。玉川大学工学部卒業。大学卒業後はレースでも活躍し、その後フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。

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