過去数十年にわたって生態経済学者は、複利に基づく貨幣制度は地球の生態系の微妙なバランスの維持とは両立しない、と述べてきた。この問題をどうすべきかについては、いくつかのアイデアが浮上している。
あるグループは、債務が指数関数的に膨らむ現在の複利システムを、単利システムに切り替えるだけでよいと主張する。
単利システムでは利息は元金だけにつくので、債務の増加は直線的だ。そうすれば債務の総額は大幅に減り、貨幣制度は生態系と調和するものになり、金融危機を招くことなく、脱成長経済に移行できるだろう。
「公共貨幣システム」というアイデア
2番目のグループはさらに踏み込んで、債務ベースの通貨を完全に廃止すべきだ、と主張する。
商業銀行に信用通貨を作らせる代わりに、国が債務なしで通貨を作り、経済に貸しつけるのではなく、経済で使うようにするのだ。
通貨を作る責任は、説明責任と透明性を備えた民主的な独立機関が担う。その機関の使命は、人間の福利と生態系の安定を両立させることだ。
もちろん、銀行は依然としてお金を貸すことができるが、そのためには100%の準備金――ドルに対してはドルで――を用意しなければならない。
「公共貨幣システム」と呼ばれるこのアイデアは決して奇抜なものではない。初めて登場したのは1930年代で、シカゴ大学の経済学者が大恐慌による債務危機の解決策として提案した。2012年には再び注目された。IMFの進歩的な経済学者らが、債務を減らし世界経済をより安定させる方法として奨励したからだ。
イギリスでは、ポジティブ・マネーという組織がこのアイデアを軸とする運動を展開してきた。
現在、よりエコロジカルな経済に向かうための有望な手段の一つとして注目されている。このアプローチの強みは、単に借金を減らすだけでなく、国民皆保険制度、雇用保障、生態系の再生、エネルギー転換などに直接、資金を提供できることにある。しかも、収益を生み出すためのGDP成長を必要としない。
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