資本主義の「転覆」や「廃止」について語る時、わたしたちは、その後どうなるのか、という不安に囚われる。
地球の死を目前にして、現行の経済システムを攻撃するのは簡単だが、改革を求める人々が、新たな社会がどのようなものになるかを述べることはほとんどない。そのため、未来は恐ろしく、予測不能なものに思える。
資本主義が消えた後の空洞をどのような悪夢が埋めることになるのか、いったい誰にわかるだろう。
しかし、経済システムを成長要求から解放する仕組みに着目すると、ポスト資本主義経済がどのようなものであるかが見えてくる。それはまったくもって怖いものではない。
ソビエト連邦の指揮管理システムの失敗を繰り返すのではなく、自主的に貧困になって原始的な生活に戻るわけでもない。それどころか、いくつかの重要な点で馴染みがある。
と言うのも、わたしたちが通常、経済と見なすもの(あるいは、経済はそうあるべきだと考えるもの)に似ているからだ。
「蓄積」を軸としない経済へ
すなわち、ポスト資本主義経済では、人々は有益な物やサービスを生産し販売する。合理的かつ十分な情報を得た上で、何を買うかを決断できる。
労働に見合う報酬を得ることができる。無駄を最小限にしながら人間としてのニーズを満たすことができる。必要とする人々に資金が届く。
イノベーションによって高品質で長持ちする製品が作られ、生態系への負荷が減る。労働時間は短縮され、人々はより幸福になる。そして、基盤となっている生態系の健全さを無視するのではなく、大切にする。
新しい経済はこのように馴染みのあるものだが、既存の経済とは根本的に異なり、その軸になっているのは、資本主義が一番の目的としてきた「蓄積」ではない。
はっきり言って、このいずれも、容易には実現できないだろう。容易だと考えるのは甘すぎる。加えて、わたしたちがまだ完全には答えを出せていない難問がいくつも残っている。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら