ほとんどの日本人が知らない金融危機の裏側 不安定な信用システムとの正しいつきあい方
メーリング氏の著書『21世紀のロンバード街』を翻訳した山形浩生氏による「訳者あとがき」を抜粋、編集してお届けする。
メーリングの視点の特徴とは
著者ペリー・メーリングの基本的な立場を彼は「マネービュー」と呼ぶ。これは純粋な経済学でもない、また純粋なファイナンスでもない、銀行の実務、特に中央銀行の実務に沿った、むしろ古典的なお金と経済の見方となる。
本書の題名はもちろん、かのウォルター・バジョット『ロンバード街』にちなんだものだ。
この本は、20世紀初頭における世界のマネーマーケットの中心だったロンドンにおけるイングランド銀行の行動を見て、そこから中央銀行のあるべき役割を抽出して見せた。その役割とはいわゆる「最後の貸し手」または「頼みの綱の貸し手」だ。
これはすでにご存じとは思う。金融危機でいちばん問題なのは、お金が不足することだ。人々がさまざまな理由で預金を引き出そうと銀行に殺到する。すると銀行は倒産してしまうし、そうでなくても融資を止めて実体経済の資金繰りが止まる。普通は銀行同士の融資で現金需要に対応できる。
でもあらゆる銀行に取り付け騒ぎが広がると、銀行部門すべてにお金がなくなり、だれもその不足を補えない。銀行が次々に倒産すれば、銀行が担保していた支払いや決済の仕組みが消え、経済全体が止まる。
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