ほとんどの日本人が知らない金融危機の裏側 不安定な信用システムとの正しいつきあい方

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が、これだけでは何のことだかわからないはずだ。これを説明するには、そもそものメーリングの掲げるマネービューの考え方を駆け足でおさらいする必要がある。

お金の階層構造

マネービューはまず、そもそもお金とは何か、というところから始まる。最近この「お金とは何か」談義はやたらに多い。

マクロ経済学の人はM1だM2だM78だという話をするだろう。中央銀行が刷るものがお金だ、この福沢諭吉のついた紙切れがお金だ、いやお金とは信用であり信用創造で生み出されるのだ、いやそんなのはインチキのお金でそれが経済を破滅させるから信用創造なんかダメ、いや黄金だけが真のお金なのだとか、いや国が税金払うための手段と決めたものがなんであれお金なのよ、いやビットコインこそ新時代のお金であり、いやこれからはデジタル通貨こそが云々。コチャラコタを引用して「お金とは記憶なのです」なんてことを言う人もいるだろう。

このすべては正しい一方で、つねに正しいとは限らない。というのも、まず重要なポイントとして、お金は「これ!」という一つの存在ではないからだ。実際に人々が取引で使う「お金」を見よう。

かつては、金本位制だった。だから本当のお金は黄金だった。でも実際には、各国の中央銀行はその黄金をもとに、自国通貨を発行した。これは「いつでもこれを黄金に換えますよ」という約束=信用だ。そしてそれをもとに、銀行は預金を発行する。預金は「これはいつでも現金に換えますよ」という約束=信用だ。

そしてその銀行預金をもとにして、さまざまな証券=借用書、手形、クレカ取引等々が発行され、それを使った決済や精算も日々行われる。

つまりお金は、

黄金/基軸通貨
自国通貨
銀行預金
証券

といったような階層構造になっている。上にいくほど、本物のお金っぽい。下に行くにつれて、信用、信用の信用、という具合に信用の度合いが高まる。物事がスムーズに動いていれば、そのちがいはあまり意識されない。でも、スムーズに動かなくなったら、それが極度に意識されて、下のほうのものはもはやお金扱いされない。どこまでが「お金」かは、状況に応じて変わってしまう。

(出所)ペリー・メーリング『21世紀のロンバード街』
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