ほとんどの日本人が知らない金融危機の裏側 不安定な信用システムとの正しいつきあい方

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こうした論者はしばしばビットコインは普通のお金とまったく同じだ、と述べる。が、これはウソだ。基本的にビットコインでは借金の仕組みが確立されていないからだ。実際の取引はごく単純な決済や精算ですら、一時的な信用を作り出さないと成立しない。ビットコインはある意味で、借金はよくないものだという誤解に基づくもので、現在の金融制度に代替できるようなものではない(とメーリングはウェブ上で述べている)。

資本主義を語る前に……仕組みを理解しよう

また強欲資本主義は、人を負債でしばりつけることで隷属させ、非人間化して搾取して成立してきたのであり、一大徳政令の不思議な呪文を唱えると、愛と自由が飛び出すの、と言わんばかりの話をするデヴィッド・グレーバーのような論者もいる。

あるいは2010年に、スイスで行われた国民投票をご存じだろうか。銀行が勝手に信用創造をしてお金を作るのが諸悪の根源なのだ、信用を廃止してすべて中央銀行の通貨発行に置き換えろ、そしてそれを民主的に統制しろという「人民通貨」をめぐるもので、否決されたがそれなりの支持者も出た。これは、最初に述べたお金の階層構造を基本的に破壊しようとするものだ。それが本当にいいことなのか?

そして話題のMMTもお金の新しい見方について……と思われがちなのは彼らが貨幣国定主義(お上が「これが納税用のお金」と決めたものがお金なのよ、という考え方)を冒頭で打ち出すからだが、実はそっちの面では特に目新しいことは言っておらず、むしろ完全雇用のために政府が借金して強制雇用しろという、戦時中の統制経済のようなものを指向した財政政策の話だというのがメーリングの見立てだが、それが当たっているかどうかは皆さんのご判断にお任せしよう。

確かに資本主義のいまの仕組みには問題もあるのかもしれない。あやしい金融屋たちがぼくたちをサクシュして格差と不平等と戦争と混乱を引き起こしているのかもしれない。が、その金融屋たちが一方では裏方として動くことで、みなさんは知らないうちにすさまじい金融危機を回避できたりしている。資本主義を打倒するにしても超越するにしても(あるいはそこで儲けるにしても)、その仕組みをもう少し理解しておくことは、決して損にはならないはずだとは思う。本書をきっかけに、そちらに興味を持ってくれる人が増えてくれれば、と祈る次第だ。

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