中国の"モノマネ"ネット企業を笑えるか? できそうでできない、タイムマシン経営
騰訊の強みは、億単位のQQユーザーを新しいSNSサービスに送り込めるところである。QQユーザーが、既存のQQアカウントで、気軽にアカウントが開設でき、しかもQQでつながっていたユーザーが、新サービスでも簡単につながったことで、チャットからチャット+写真付き日記+音声チャットへと、より深いネット上のコミュニケーションを実現したのである。
中国人ユーザーが中国人ユーザーを呼び、模倣サービスそれぞれが億単位の中国人ユーザーを確保した。WEB2.0サービスにおいては、同胞の利用者数こそが肝で、同胞が利用しないサービスは、ますます中国人の眼中から外れていったのである。
ベトナムも中国には到底及ばない
さて、あまり知られていないが、ベトナムのインターネット環境は、ある意味、中国のインターネット環境に似ている。中国ではGoogleやtwitter、Facebook、YouTubeなどにアクセスできないが、ベトナムでも時と利用キャリアにより、twitterやFacebookが使えなくなることがある点で似ている。さらに、自国のネットサービスを伸ばそうと、タイムマシン経営を行っている点についてもやや似ている。
Facebookがリリースされてだいぶ時間が経過した後、ベトナム産模倣サービスの「Zing me」が生まれた。ただしベトナム企業のタイムマシン経営の速度は非常に遅かったので、Zing meが知られる前に本家のFacebookが普及し、シェア争いの決着がついてしまった。Facebookがブロックして使えなくなっても、すでに普及していたので、誰もが壁越えをして利用した。
ECも独特の展開となっている。ベトナム産のECサイトもちゃんと立ち上がっているのだが、信頼できる購入の場が出来上がっていない。そのため、ベトナムでのECのやり取りは、Facebookを「売ります・買います」掲示板のように使い、フォロワーに対し、商品を出し、直接会って販売する。そうした原始的な方法が主流となっている。
ベトナムのように模倣サービスのリリースと拡散が遅いと、グローバルサービスに飲み込まれてしまう。しかし、中国のように超高速なタイムマシン経営ができる習慣を持ち合わせている国では、脱グローバルサービスと、国産の新興サービスがそれぞれに発展する可能性を秘めているのだ(もちろん、政府が自国企業を保護する動きを出していれば、外資企業が入ること自体、難しいこともあるが)。
LINEが多く利用されるタイのように、外資企業が地元で愛されるローカルサービスを出せる環境の国もあるかもしれない。中国企業のような超高速タイムマシン経営を行う企業が地場になければ、LINEのような舶来サービスが浸透できる可能性はある。
人口の多さや政府の政策だけで、中国のインターネット企業が成長したと言う向きもあるが、それは違う。モノマネをいとわない「タイムマシン経営」と、その後の自国民向けアレンジこそが彼らの成長の源泉であり、ほかの新興国には到底、追随できないものなのだ。
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