VWの新世代EV、「ID.2all」が映す強烈な危機感 2026年までに発売、今見せなければならない訳
展示車両は外形だけのモックアップだったが、映像ではインテリアの意匠も公開された。全体にプラスチック感が強い現行のIDシリーズと異なり、内装のクオリティ感は悪くなさそう。デジタルパネルとされたメーターはアナログ表示が可能で、ビートルやゴルフのデザインが再現可能になっていたし、すべてタッチスイッチにするのではなくあえてクリック感のあるハードスイッチが残されるなど、愛着を持ってクルマに接することができるようにという配慮や工夫が、あれこれと施されていた。
こうした動きには、確かに伏線があった。壇上で昨年よりフォルクスワーゲン乗用車部門のトップとなったトーマス・シェーファーCEOは「フォルクスワーゲンを真の“Love Brand”に変革する」という意気込みを示した。また、それに先立ってはタイプ1、つまりビートル以降の歴代の実にさまざまなモデル……ゴルフ、ポロ、カルマンギアにヴァナゴン、さらにはフェートンに至るまで! がステージ上を(排ガスの匂いをさせながら)走りまわり、当時の映像などが流れ、いかにフォルクスワーゲンが人々の生活に寄り添い、彩りを添えてきた存在かがアピールされていた。
ブランド力低下への危機感
要するに背景にあるのは、BEVシフトを宣言してIDシリーズを導入して以降、フォルクスワーゲンのブランド力が低下しているという事実にほかならない。質実剛健なクルマづくり、シンプルだけど良いモノ感のあるデザイン、堅実で信頼感のある走りっぷりといった、まさにゴルフのような商品が体現してきた価値が、近年の商品では薄まってしまっている。またコミュニケーションの部分でも、そうした部分が置き去りにされているといった空気は、正直言って日本だけでなく全世界的なものだったようだ。
シェーファー体制のフォルクスワーゲンは、ブランドをあるべき位置に戻すことに、まず何より力を注いでいくことになる。それが“Love Brand”宣言であり、ID.2allの発表につながっている。2026年までに発売というクルマだが、彼らには今、見せておかなければならない理由があったのだ。
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