フェラーリ「プロサングエ」に見えた究極の境地 SUVルックで初の4ドアは走りも造形も桁違いだ

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姿勢変化の小ささは後席の快適性にも効いている。上体が前後左右に揺すられることが少なく、高い静粛性も相まって、とてもリラックスして乗っていられるのだ。実際、ワインディングロードで走りを楽しんでいるときも、後席で船を漕いでいた同乗者は、まったく目を覚ますことがなかったのだ!

V型12気筒6.5Lエンジンは、何より心地良い吹け上がりと、その際の“フェラーリミュージック”で陶酔させるが、一方で2100rpmで最大トルクの80%を発生させるなど実用性もおろそかにされてはおらず、どんな状況からでも即座に欲しいだけの力を引き出すことができる。エンジン前方に置かれ、駆動力を左右輪に配分するPTU(パワー・トランスファー・ユニット)によって前輪に、そしてトランスアクスルレイアウトとされた8速DCTを介して後輪にパワーを伝える4WDの安心感もあって、725PSというすさまじいアウトプットに臆することなくアクセルを踏み込むことができた。

究極のかたちを追求する崇高な意思が見えた

正直に言えば、いくらSUVじゃないと言おうと、フェラーリもついに……という何とも言えない思いは私にもなかったわけではない。しかしながら実際のプロサングエは、世間のSUVトレンドが開発の原動力になったことは間違いないが、結果としてデザインにしても後席含めた快適性、使い勝手にしても、そしてもちろん走りの面でも、ほかにはまるでないきわめて独創的なクルマに仕上がっていた。

試乗を終えたプロサングエのボディーは、溶け出した雪や泥を跳ね上げて、とても汚れていたのだが、その姿は自分でも意外なことに、何とも精悍に見えた。

そんな風に目一杯に使われる姿も似合うこと。それこそが目指した地平は、既存のプラットフォームを活用して……といったクルマとはまるで異なるこのクルマの本質、いざ手がけるとなれば究極のかたちを追求するという崇高な意思のようなものを端的に示していると感じられた。それゆえに高価なことも事実だが、その価値は間違いなく、ある。

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島下 泰久 モータージャーナリスト

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しました・やすひさ / Yasuhisa Shimashita

1972年生まれ。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。走行性能からブランド論まで守備範囲は広い。著書に『間違いだらけのクルマ選び』(草思社)。

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