一律料金で通院不要「マウスピース矯正」の正体 デジタル化で低価格化や患者の利便性をアップ
「まず知り合いの経営者などを中心に体験してもらった。経営者は影響力が強い。また質にこだわる人が多い。プロダクトとして質の高いものをつくり、さらに初回診療は0円で30分、通院不要など、フックになる特徴を打ち出した。そうした特徴をSNSや、後にオウンドメディアを使い発信していった」(西野氏)
「タイパ」、つまり時間のコスト意識を強調することで、男性の心に響いたようだ。また「質へのこだわり」に対応すべく、ブランディングではアップル社を意識し、公式サイトや広告、商品のパッケージ、クリニックのデザインなどもシンプルでスタイリッシュなスタイルで統一した。
「矯正はそれなりのお金をかけるものなのに、従来は『治療だから』ということで、デザインに対する優先度もそこまで高くなかったように感じる。そうしたところにも疑問を感じていた」(西野氏)
思えば、この2度目のターゲットモデルは西野氏自身に近いと言えるだろう。自身の問題意識から始めたビジネスなので、自分をモデルにして設計することでうまくいったのではないだろうか。
男性がユーザーの7割を占め、20〜30代がメインだが、最近では40〜50代男性や女性にも広がってきたそうだ。
現在、マスクの自由化や新年度に向け、予約や問い合わせが増えているという。まずはクリニックあたりのブースを増やし、受け入れキャパシティを広げるとともに、全国展開を視野に、早い段階でクリニック自体を増やしていく。歯科医師の採用も課題となる。
治療方針の開示、データの提供で「見える化」
以上、歯列矯正における新しいビジネスを見てきた。歯列矯正は基本的には保険がきかない自費治療であるが、医療であり、間違うと健康にかかわる。それにもかかわらず、金額やサービスなどについては怪しさがつきまとう。実際、2023年1月にはあるクリニックが金銭トラブルによる訴訟を起こされている。
今回紹介したOh my teethでは、治療方針の開示、データの提供などによって、これまで明らかになっていなかったことを見える化。分かりやすいサービスを目指しているようだ。これにより、他のクリニックや他のブランドと比較することができるのはユーザーの立場ではありがたいことだ。
しかし新しいサービスなだけに、将来的なトラブルや事故の可能性なども心配だ。消費者自身がしっかりと調べることももちろん重要だろう。そしてもはやこれだけ新しいブランドが増え、ユーザーも広がってきている以上、業界全体の課題として捉えるべきだ。マウスピース矯正歯科の認定制度やガイドラインのようなものがあると役立つのではないだろうか。
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