一律料金で通院不要「マウスピース矯正」の正体 デジタル化で低価格化や患者の利便性をアップ

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また最後まで矯正を続ける人が97%と、完了率が高いのも同社の特徴だという。

マウスピース矯正の難しさが食事と歯磨き以外の時間、20時間以上装着していなければならないことだ。間食もできず、水分補給も、糖分を含まず着色の心配がないものに限定される。そのため続けられず脱落してしまう人も出る。Oh my teeth調べでは、従来のマウスピース矯正では3割にも上るそうだ。

Oh my teethではLINEによりユーザーと密にコミュニケーションをとることで、継続率を高める。週ごとの歯科医師によるチェックのほか、Oh my teethスタッフからの「声かけ」を行っているそうだ。

歯型をもとに3Dプリンタでマウスピースを作成。矯正度合いが少しずつ異なるマウスピースを順番につけ替えていき、理想の歯並びになるまで歯を動かしていく(編集部撮影)

なお、マウスピース矯正では完了後も歯が動いて戻ってしまう「後戻り」が発生することが多いため、治療が終わっても一定期間マウスピースをつけ続ける「保定」が必須となる。

同社では保定用に最後のマウスピースを使うか、専用のリテーナー(別売り。上下セット税抜き1万円)を購入してもらう。基本的には矯正と同じ期間は日に20時間装着、その後は睡眠時のみなど、短くしていく。他のクリニックの例を調べてみると、保定完了までの期間はケースによって異なり、半年程度は日中も装着する必要があるとしているところもある。メンテナンスのため一定時間付けることを習慣にする人もいるようだ。

Oh my teethのサービススタートは2019年12月だが、2022年末までに1万人が体験。売上高は3年で10倍に伸びたという。

不思議なのが、口元がマスクで隠れてしまうコロナ禍において伸びてきたことだ。しかし同社の代表取締役CEOである西野誠氏によると、「コロナ禍だからこそ」の事情もあるようだ。

「コロナでは旅行や外食を控える分、自己投資への需要が高まった。またユーザーの声を聞くと、オンライン会議で自分の口元を見る機会が増えたことも関係しているようだ。マスクで隠れている今のうちに治しておきたいという人も多い」(西野氏)

「歯医者に行きづらいのはなぜだろう」

西野氏はもとITエンジニアで、まったくの門外漢。その氏がマウスピース矯正に取り組んだ理由の根本には、学生時代からの「問題意識」があった。

Oh my teeth代表取締役社長の西野誠氏(編集部撮影)

「歯医者に行きづらく、虫歯を悪化させて抜歯まで至ってしまい後悔した。そのときに、歯医者は重要なのに、さまざまな理由で行きづらいのはなぜだろう、と感じたのが、歯の治療における最初の疑問だった」(西野氏)

その後、自身で矯正をする機会を得て、問題意識はさらに具体的になる。「アクセスが悪い」「予約を入れても待たされる」「歯医者によって値段がバラバラ」「全体の治療費が見えない」などだ。

また技術や知見が共有されず、診断が歯科医師ごとに異なる。

次ページ実際にサービスを立ち上げると、大きな壁が立ちはだかった
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