一律料金で通院不要「マウスピース矯正」の正体 デジタル化で低価格化や患者の利便性をアップ
「例えば自分の過去の抜歯についても、別の歯科で『実は抜かなくてよかった』と言われたことがある。これも本当かどうか分からない。自身の身体のことなのに、医師を信用できないこと自体がおかしい。そうしたことを1つひとつ変えていきたいと思った」(西野氏)
「金儲け目的」と見られた
しかし実際にサービスを立ち上げると、大きな壁が立ちはだかった。
異業種からの参入であり、矯正歯科の業界から色眼鏡で見られたことだ。同社が参入した2019年以降は13ブランドも増えている。従来からの医師の立場からすれば、歯科矯正はあくまで治療。そこへ低価格を謳う新規企業が多数参入してきたことで、「金儲け目的」と見られたのだ。
そうした見方は今も存在するし、実際ユーザーの立場からしても、歯科の専門でない企業が扱っても大丈夫なのか、という思いはぬぐえない。
ただ、西野氏はビジネスを始める前に、同じくエンジニアである共同創業者とともに100人以上の矯正歯科医師にヒアリングを行ったという。すると、医師自身も歯科治療の業界について疑問や課題意識を抱いていることが分かった。
「例えば、矯正歯科の治療費には業界の基準がない。これでは価格競争になってしまうのでは、という声もあった。また歯科は多くが個人開業。小さな組織内で順位があり、上の立場には逆らえないという人間関係の問題を挙げる人もいた」(西野氏)
こうしたヒアリングを重ねる中から、西野氏の「日本の歯科を変えたい」という思いに共感してくれる医師を採用したそうだ。また医師自身の動機を聞くと、症例数が多いこと、矯正を専門的に勉強できることなどがあるという。
というのも、初回に撮った歯のスキャンデータを含め、症例や治療計画、治療状況といったデータを提携のクリニックや医師で共有。データを蓄積している。個人のクリニックに所属するより症例数も多く、さまざまな医師の知見も集積されるということだ。
また2021年7月から「Oh my teeth メディカルポリシー」を公開し、同社の治療に対する姿勢を明確にしている。この中では、外部クリニックや医師と提携して、治療方針についての議論を行っている旨も記されている。
さて、2019年にサービスをスタートした同社だが、当初はユーザーが集まらず伸び悩んだという。伸びるきっかけになったのが、ブランディングを最初から見直し、ターゲットを女性から「忙しい男性」に切り換えたことだ。歯列矯正市場におけるボリュームゾーンは若い女性。同社にとって挑戦だったが、結果的に成功した。
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