人民元はIMFのSDRに採用されるのか 国際化する人民元、「ドルへの挑戦」へ前進

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購買力平価を使った場合には2019年には中国経済のシェアは18.7%となり、15.4%に留まるアメリカとの差は拡大していくという予測になっている。ニッセイ基礎研究所をはじめ、実際の為替市場のレートで換算しても2020年頃には中国の経済規模がアメリカ経済を上回ると予想している機関は、少なくない。

貿易の面では中国経済の重要性が拡大していることがより顕著だ。中国の輸出金額は2009年にはドイツやアメリカを上回って世界一になった。輸入金額でも、中国は2009年にはドイツを上回って世界第二位になり、2013年の輸入金額は1.9兆ドルに拡大して、アメリカの2.3兆ドルに迫る規模となっている。

人民元のオフショアでの利用は拡大しつつある

経済規模や貿易面では中国の重要性が増したが、これに比べると国際金融市場での人民元の利用は進んでいないと言われることが多い。SWIFT(国際銀行間通信協会)の発表資料によれば、国際決済に使われる通貨の構成比率で、人民元は、米ドル、ユーロ、ポンド、円に次ぐ第5位を2014年11月から維持していたが、今年の2月には第7位に下がった。しかし、2月には春節の影響があったと見られる。2012年12月には第14位だったのだから人民元の利用は急速に拡大しており、ポンドや円を上回るのも時間の問題だろう。

人民元を使った金融取引には、中国の国内の金融システムに不安があることや、司法制度が信頼できないことなど様々な問題が指摘されている。また、為替レートの安定を維持するために、中国政府が人民元の国際的な取引の自由化を望まないという見方もある。

しかし、SWIFTの資料からは、人民元による国際決済は香港が約7割であり、香港以外の中国国外での利用が2013年2月の17%から2015年2月には25%へと高まっていて、オフショア市場での利用が拡大していることが分かる。中国は国内の規制を残したまま、オフショア市場での人民元の国際的な利用拡大をはかる方針だ。

BIS(国際決済銀行)の「外国為替およびデリバティブに関する中央銀行サーベイ」によると、世界の外国為替取引額は2013年4月の調査では1日で5兆3450億ドルに上る。貿易金額は年間で19兆ドル程度に過ぎない。貿易の決済需要は国際金融取引の中で重要でなく、対中貿易が拡大して世界一になっても国際金融の世界ではドルの圧倒的地位は変わらないと考えるかも知れない。しかし、貿易取引の拡大は人民元の国際金融取引を拡大する圧力として働いている。

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