SDGsで「失敗する企業」「うまくいく企業」の境目 社会課題をビジネスで解決する「3つの柱」
なぜなら、どれだけ環境や社会に良くても、同時に経済的課題を解決することができなければ、社会課題解決型はもとより、ステークホルダーにとっても事業として立ち行かなくなるからです。
そして、それだけでなく、経済的な課題自体が大きな社会課題そのものでもあり、解決することで生み出されるソーシャルインパクトは大きいのです。
①の「シンプルにする」で解説した視点でその構造を表すと、「経済」が中心から全体に影響を与えることができる構造がよくわかります。「コアイシュー」は、ステークホルダーが課題を抱えていたことでかかっていたコストや、これからかかるはずだったコストを、「課題」の解決によってどれだけ軽減できるのかを定量的に表すことができます。
そのため、これまで環境や社会に対しての課題を認識していながらも、目を背け続けざるを得なかった社会課題の解決策を生み出す力を持っています。
例えば、飲食店や中食などで発生している「食品ロス」という課題。「売れ残らないように値下げをして食品ロスを解決する」という課題設定は、表面的なイシューであり、今すぐ本質的に解決策を求められる「コアイシュー」ではありません。
なぜなら、飲食店や中食業にとって食品ロスは、大量廃棄による環境負荷という課題だけでなく、自分たちがつくった食品を捨てなければならないという精神的苦痛があるなかで、それでも単純に値下げや安売りをできない事情があるからです。それは、「食品ロスは利益率を下げてしまうが、単純な値下げや安売りはブランドイメージを下げる恐れがある」という経済的な課題です。
2つ目の柱:発明はいらない、「新結合」せよ
実は、社会課題解決型も常に「新しいアイデア」を追求しています。しかし、アイデア追求型のように需要なき市場で失敗に終わるということはありません。それはなぜでしょうか。
アイデア追求型の「アイデア」とは、ビジネスのアイデアを指します。それに対して、社会課題解決型の「アイデア」とは、まさに、本書で紹介してきたスタートアップ各社のビジネスモデルそのもの。「社会課題をビジネスで解決する仕組み」であり、この仕組みを生み出すアイデアです。
そして、この仕組みこそが「社会課題解決型」が「社会課題解決市場」に供給する解決策です。
社会課題解決型はこの「社会課題をビジネスで解決する仕組み」のアイデアを常に追求し続けています。なぜなら、これから社会課題をビジネスで解決し始めるときだけでなく、より最適な解決策の追加供給であったり、事業規模を拡大するときであったり、あらゆる場面において、課題解決のために必要不可欠かつ強力な武器となるからです。
「社会課題を解決する仕組み」はイノベーション=「新結合」によって生み出されています。新結合とは、経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーター(1883~1950)が提唱した概念で、「これまで組み合わせたことのない要素を組み合わせることによって新たな価値を創造すること」を指します。
つまり、ゼロからイチの発明は不要。社会課題をビジネスで解決するイノベーションは、すでに私たちの社会にあるものの組み合わせで起こすことができます。
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