話は変わりますが、アメリカではアフガンとイラク戦争の帰還者の自殺者は、年間8000人(反戦イラク帰還兵の会発表)で戦死者を上回っていると言います。すべてが同じ理由だとは思いませんが、どれほど過酷な経験がこのような数字をたたき出しているのでしょうか。
これは何も、アメリカに限った話ではありません。紅蜜柑様、第1次イラク復興支援隊のヒゲの隊長(現参議院議員・佐藤正久氏)の帰国報告は、制服とベレー帽、敬礼の角度も決まっていて格好よかったですね。覚えていますか。
ところが2014年に放送されたNHKの「クローズアップ現代」によりますと、当時のイラク復興支援隊の未公開テープ1000本が公開され、その後5年間で、帰国した自衛隊員1万人中28人が自殺しているそうです。これは日本のそれ以外の自殺者の14倍です。しかも非戦闘地域だというのも正確ではなく、テロの脅威にさらされていた地域だったのです。戦争支援でなく復興支援でこの数字は、何を語っているのでしょう。
そう言えば、先に紹介しました友人の(カンボジアに道路を造りに行った)佐々さんも、カンボジアから帰ってきてからしばらくは興奮状態が続き、その後ふさぎこんで重度の心の病にかかり、治療の甲斐なく故郷に帰りました。因果関係は不明ですが、そしてどの職業でも言えることですが、自衛隊入隊は適性問題とも真剣に向き合う必要がありそうです。
息子が戦地に行ったあと気づいても遅い
難しい政治の件はよく理解できませんが、2014年に閣議決定された集団的自衛権の行使容認で、イラクのときがそうだったように、たとえばアメリカ大統領が「某国に大量破壊兵器がある」とデッチ上げて戦争を仕掛けた場合、日本に攻撃が及ぶ可能性がなくとも同盟国の一大事ですから、日本も参戦することになる可能性があります。
戦争になればキャリアのある者から派遣されるのではありません。新米幹部も、派遣が決まった部隊に所属していたら、即戦力です(だと思います)。
実際に戦争を経験した人の話を読み聞きしますと、「どんな事情や理屈をつけても、戦争は起こしてはいけない、絶対反対だ」と皆さんがおっしゃいます。NHKの最近の放送では、ひめゆり部隊の生存者であるひめゆり平和祈念資料館の館長が、「戦争は、誰にもわからない形で秘かに準備される。今ほどそれが迫っていると感じたことは、この70年間でなかった。いったん戦争が始まれば、反対しても手遅れだ」と訴えておられました。
このような言葉を、私たちは戦争体験者から数えきれないほど聞いてきました。ウソを言っているようには聞こえません。ですから、大げさだと笑われようと、私の思考回路はそれが迫っていることが前提なのです。
息子様の防大志望が、親が最も反対しにくい「祖国と世界の正義を守るため」だとします。その反対理由が、「我が家はおカネに困っていない、先輩の靴磨きなんかしてどうするんだ」というものでは、息子さんを説得できません。
では、どのように説得するべきか。私が紅蜜柑さんの立場ならば、「もし戦争になったとき、国を守るという大義があっても戦争に行かせるわけにはいかない」と反対します。
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