「救急動物病院」取材で知る、"犬の血液型は8種類" 肉球でわかる病気、夜間に多いトラブルは?
退院後はかかりつけの動物病院のもとに返すが、その際は容体や治療中に施した処置、処方した薬などの情報を、わかりやすく報告書にまとめ、メールやFAXで送信する。病気や治療などの医学的な経過の見通し(予後)をよくするためには、救急病院とかかりつけ医のいる病院との連携が大事になる。
閉院時間。夜中に異物を飲み込んだ犬を飼い主に引き渡し、仕事が終わる。かかりつけ医のいる病院が開院するまで、動物を預かることもある。
手術や皮膚病、ケガなどによる外傷では、犬や猫が傷口をなめないようエリザベスカラーを付けるケースもある。エリザベスカラーとは16世紀のイギリスのエリザベス朝時代の衣服に用いられた襞襟(ひだえり)に名前の由来がある。
午後8時の開院から翌午前5時の閉院までは、あっという間。スタッフは休憩時間が取れないこともあるそうだ。
小林院長は、「心肺停止で救命措置をしたのにもかかわらず、残念ながら命を救えないときも出てきます。動物の心肺停止は、ガイドラインに沿っていても生存率が低いのが現状です。そのために皆で症例を振り返り、どうすれば状況を改善できるかを検討します」と言う。
そのうえで、「この救急病院では、緊急手術も頻繁にあります。獣医師やスタッフが、動物を飼い主さんの家族の一員と考え、救えない命をなくそうと懸命に努力しています。夜間帯で大変、タフな現場ですが、全スタッフは充実感を覚え、やりがいを感じながら獣医療に臨んでいます」と話している。
緊急オペにも対応する
同院では誤飲などへの対応だけではなく、緊急手術もしている。
例えば、胃拡張・胃捻転症候群という病気がある。胃が空気で大きく膨張し、さらに胃がねじれてしまう病気で、大型犬に多い。短時間で命が危険な状態になるので、全身麻酔での手術が必要となる。
また、緊急性の高い手術といえば、帝王切開もそうだ。帝王切開は時間との勝負だ。破水しても出産の兆候がない場合に手術に踏み切ることになる。出産頭数が増えるほど、現場の負担は大きくなる。
手術でいえば、飼っているペットの血液型も大事になる。
実は、犬の血液型を決める物質は13種類以上あるとされ、現在、国際的に認められている犬の血液型は、DEA(Dog Erythrocyte Antigen/犬赤血球抗原)の型により分類されたもので、DEA1.1、1.2、3、4、5、6、7、8の8種類。一方、猫はA型、B型、AB型の3つに分類され、多くの猫がA型だという。
犬の場合、初回の手術では通常、他の血液型に対する抗体を持っていないため、血液型が違っていても大きな問題になることはない。ただこれは、ほかに選択肢がない場合に限られ、基本的にはリスクを極力避けるよう、可能な限り同種の血液型を使用する。
過去に輸血の経験などがあると、抗体が作られている可能性がある。違う血液型が入ると抗体が反応して、拒否反応を起こすことがあるため、輸血する際には血液型を適合させる必要がある。
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