「救急動物病院」取材で知る、"犬の血液型は8種類" 肉球でわかる病気、夜間に多いトラブルは?

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「中毒性物質ならば、拮抗薬(別の物質の作用を妨害する物質)を検討しなくてはいけませんね」(小林院長)

「迅速な処置が必要かもしれないので、胃洗浄の準備もしておきましょう」(ほかの獣医師)

「それでは、すぐに対処できるようにチューブなど胃洗浄に必要なものを用意しておきます」(動物看護師)

――こんな会話が繰り広げられる。

午後9時頃

飼い主が犬を抱きながら病院に到着。待ち構えていた獣医師は受付でトリアージ(動物の様子から命にかかわる異常をいち早く見抜き、処置や治療の優先順位を決定)をする。

体調変化のサインを見落とさないよう瞬時に観察することが重要で、小林院長は、「顔を上げられる状態かどうかをまず、確認します」と言う。

顔を上げられずにいたり、診察台で横たわって立つことができなかったりした場合、重症の可能性がある。動けない場合でも歯ぐきを診ることができれば、診察できる。これはトリアージで使う手法の1つで、CRT(毛細血管再充満時間)といい、犬歯の上の粘膜を指で圧迫した後、指を離してピンク色に戻る時間をチェックする。正常なら、1~2秒でピンク色に戻るが、戻り時間が遅いときは脱水のおそれなどがある。

その後も、聴診器を当てて体内の音を聞き、脈拍(心拍)、呼吸を確認、血圧、体温といったバイタルをチェックする獣医師。血圧は前足か後ろ足、または尾に、人と同じようにベルト(カフ)を巻いて測定する。体温は、動物用体温計の計測部分にゼリーや潤滑剤を塗って、肛門に差し込み直腸温を測る。

初めて来院したペットが、病院のもの珍しさから顔を上げて院内をきょろきょろ⾒回していれば、多くのケースで緊急度は低い。だが、決して楽観はできないそうだ。

採血を前足で行わない深い理由

血液検査のための採血では、首や後ろ足に針を刺すのが基本だ。

小林院長は、「来院後の血液検査で前足は使いません。急変時などの危機的な場面で、前足の静脈内に針やカテーテルを挿入することがあるからです」と話す。

血液検査は20~30分程度で結果が出る。その結果などを確認したうえで、治療方法を決定する。依然として、何を飲み込んだかがわからないときは、レントゲン撮影もする。

誤飲した異物が、気道などに詰まれば、窒息のおそれがある。そのため、まずは薬で異物を吐かせる。反対に、針などの場合は口から吐かせるとかえって危険なため、全身麻酔のうえで内視鏡を使って異物を回収する。この場合、処置の時間が4時間から6時間におよび、翌朝になることもあるそうだ。

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