マック「てりたま」一部休止の発表から見える苦心 卵不足で代替商品を提案、回りくどい表現の背景

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実際、マクドナルドの「鉄則とは真逆」の広報戦術は功を奏したようだ。記事データベース「日経テレコン」を検索すると、新聞は日経、朝日、毎日がいずれも小さな枠で報じたのみ。テレビも全国放送では、テレビ朝日『スーパーJチャンネル』とフジテレビ『めざましテレビ』『めざましどようび』が短く伝えただけだ。

「まったく報じられない」とまではいかなかったが、「日本の外食産業で最も注目される企業」マクドナルドの、「最も視聴者や読者に身近な商品である卵不足」による、「製品の販売休止」としては、扱いはかなり小さいものといえるだろう。

「鉄則」とあえて「真逆」の発表をすることで、扱いを最小化する。私も20年以上にわたって、メディア、そして広報支援に携わっているが、初めて見るパターンの成功事例だ。狙ったとすれば、かなり高度な広報戦術ではないか。

メディア対策を成功に導いた高度な広報戦術

さて、ここからは完全に私の推論となる。「通常と異なる、回りくどい表現のプレスリリースは、どのような経緯で生まれたのか」。その理由について、考えてみたい。

消費者からの問い合わせやクレームに直接対応する部門としては、「消費者から隠しているように思われるのも避けたいので、早々に発表してほしい」はずだ。広報としても「メディアから問い合わせが来ているので、早々に、淡々と、発表したい」ところだ。

だが、現場で売り上げ責任を担う事業部門としては、そう簡単にはいかないだろう。毎年人気のキャンペーンだけに、年間の売り上げ計画のなかでも、一定の割合を見込んでいたのは間違いない。テレビCMなど、大規模な出費を伴うキャンペーンを仕込んだ後でもある。

実際、まだ「全店舗で販売休止」するわけでもない。悪影響を最小限に抑えるため、販売停止の情報拡散は必要最低限にとどめたうえで、代替商品で「人気商品」の穴を埋めたいところではないか。

そういう意味で、大企業の関係部門の思惑が交差する微妙な接点で生まれたのが、今回の「特異な」プレスリリースのように思えるのだ。

昨今の卵不足に加え、大企業ゆえの社内調整の苦心の結果が、今回のプレスリリースだったのではないか……ということだが、いずれにしても、「法則」とは真逆を行くことでメディア対策を成功に導いた、かなり高度な広報戦術だったのは間違いないだろう。

下矢 一良 PR戦略コンサルタント

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しもや いちろう / Ichirou Shimoya

早稲田大学理工学部卒業。テレビ東京に入社し、『ワールドビジネスサテライト』『ガイアの夜明け』を経済部キャップとして制作。スティーブ・ジョブズ氏、ビル・ゲイツ氏、孫正義氏、三木谷浩史氏、髙田明氏、藤田晋氏、前澤友作氏らにインタビュー。その後、ソフトバンクに転職し、孫正義社長直轄の動画配信事業(Yahoo!動画、現・GYAO)を担当。「ソフトバンク・アワード」を受賞。現在はPR戦略コンサルタントとして中小企業のブランディングや宣伝のサポート等を行う。

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