マック「てりたま」一部休止の発表から見える苦心 卵不足で代替商品を提案、回りくどい表現の背景

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そのような観点から、もし今回のマクドナルドのプレスリリースを「メディアが取材したくなるもの」として書き直すと、以下のようになるだろう。

タイトル:卵不足による「てりたま」販売休止
本文要旨:「てりたま」は一部店舗で販売休止することになりました。順次、販売休止店舗は拡大する見通しです。お客様にはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解賜りますよう、お願い申し上げます。

プレスリリースのもう1つの「鉄則」は、「1プレスリリースに1主題」。それゆえ、代替商品の紹介は、当然行わない。だが、今回のマクドナルドのプレスリリースは、こうした「鉄則」の真逆にあるものだ。

「鉄則」どおり今回の販売休止を発表した場合

これが一般的な中小企業やベンチャー企業であれば、私も「力量のない広報が書いたのだな」と思うだけだ。だが、プレスリリースの発出元は「外食業界の巨人」マクドナルドである。「鉄則と真逆」の下手なプレスリリースしか書けないはずがない。

通常、プレスリリースの目的は「メディアに報道されるためのもの」だ。だからこそ、私には「あえて」鉄則の真逆で書くことにより、「大々的に報道されないこと」を狙ったように思えるのだ。実際、今年1月に原材料価格の高騰による価格改定を発表した際は、マクドナルドは実に簡潔でわかりやすい表現で伝えている。

もし、マクドナルドが「プレスリリースの鉄則」どおり、「簡潔で、断定的で、わかりやすい表現」で今回の販売休止を発表したら、どうなっただろうか。

マクドナルドは、外食産業のなかで消費者に最もなじみのある企業だ。それゆえ、メディアは大々的に「ついにマクドナルドでも、卵不足で販売停止」と大々的に報じることになる。

そうなると、マクドナルドは「卵不足」の代名詞的存在になりかねない。「てりたま」を楽しみにしていた消費者の足はマクドナルドから遠のき、売り上げ全体に悪影響が及んだのは確実だ。

だが「店舗及び時間帯によって、たまごを使用した商品の販売を休止している場合がございます」という「シンプルではない表現」で発表されれば、メディアは「マクドナルドでも、ついに販売停止」とは打ちづらくなる。

「通常どおりに扱っている店舗」も数多く存在しているので、メディアは「販売休止」と断定的には書けず、「一部販売休止」という表現にとどまってしまう。加えて、とくにテレビは「どの店舗の、どの時間帯だと販売休止しているのか」「いつから、どの店舗で販売停止になるのか」といった詳細まで伝えにくいことも追い打ちをかける。

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