地震、津波、原発の三重苦に悩むいわき、防波堤改築の間隙に襲われた豊間地区【震災関連速報】

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地震、津波、原発の三重苦に悩むいわき、防波堤改築の間隙に襲われた豊間地区【震災関連速報】

いわき市災害対策本部は中央消防署内に設置されている。その一画に設けられているのが安否確認のために設けられた部屋。家族、知人などの安否、避難場所を知りたい人たちからの問い合わせ電話が相次いで寄せられている。いわき市北端の一部地域が福島第一原発の30キロメートル圏内に入るため、市民の一部が独自に市外に避難していることもあって、避難場所の確認が難しくなっている。

「避難者に料金が無料となっている常磐自動車道を使って市外に出る人もいるが、避難地域での生活がままならず、結局、手持ちのおカネを使い果たした人が戻ってきたりしている」という複雑な事情もある。原発に近づくほどに捜索活動が困難化し、安否の確認作業の進捗が遅れているということもある。災害対策本部では、市民に落ち着いた行動をとるように訴えているが、原発問題が解決しないなかでは混乱を収束させにくい。

部屋の壁には、避難施設などの場所と電話番号などを記した用紙が所狭しと張られているが、そのなかには「ひばくの検査」という用紙もある。市民の問い合わせが多いからだ。福島県の厳しい事情を如実に物語っている。
    
 犠牲者の一覧表もあり、日々、その内容は更新されている。もちろん、犠牲者が増えているからだ。その一覧表のなかで、27日現在、最も犠牲者が多い豊間地区。先に報告した全壊地域、久之浜の南に隣接した同地区に向かうと、海辺に面した狭隘な街が大きく破壊されている光景が飛び込んできた。

この地域は不幸にも、震災発生直前まで4メートルほどの防波堤をさらに高くする工事が行われていた。その工事が完了していたら、今回、津波被害は少しでも軽減したかもしれない。しかし、最悪なことに新たな防波堤を作るべく、従来の防波堤を取り壊していたときだった。つまり、防波堤が撤去された街を津波に襲われてしまったのだ。

住民たちは今、疲労した表情でがれき処理などを行っている。その1人の男性に聞くと、「家族全員が市内中心部にいたので全員が助かったが、家はダメです」と憔悴していた。

少し高い場所にある雑貨屋の店横の壁には、おそらく、地元の子供の手によるものだろう、大きな黒い手書きの言葉がこう書かれていた。

「がんばっぺね! とよま なかや」

被害が甚大であり、不明者もいまだに多い四倉・久之浜地区対策本部の吉田さんは30日朝、「避難所には、やはり、水、食料の支援を」と訴えていた。


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(浪川 攻=東洋経済オンライン)

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