図面管理にもAI、変貌する「製造現場」の危機感 「勘頼み」脱却し、部品調達などの業務を効率化

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DXの拡大はコスト削減だけでなく、近年課題になっている技術伝承の面でも役に立つ。富士油圧精機の剱持氏は「DXの本質は次に残すことといっても過言ではない。業務を熟知している社員が退職しても、業務がDX化されていれば知見を次の人に引き継ぐことも簡単だ」と話す。

実際、ものづくりの現場では人手不足が深刻だ。よりよい待遇を求めて転職する人も相次いでいる。そもそも魅力ある職場としてアピールするには、オペレーション業務だけでなく、クリエイティブな仕事ができる環境に変える必要もある。

「日本のものづくりにはポテンシャルがある。それを解放したい」。そう語るのはキャディの加藤勇志郎社長だ。創業以来、加工部品の調達支援ビジネスに取り組んできた。加藤氏によると、国内の製造業で部品などの調達分野が生み出す生産額は年間120兆円に及ぶ。だが、この分野では目立ったイノベーションが生まれず、非効率な点が多く残っているという。

業績拡大で社員は1年で倍以上に

加藤氏は日本の製造業の現実に危機感を抱く。「アメリカやドイツでは、人口があまり増えていなくても経済成長している。成長のない日本では、1人当たりの生産性が悪いということが明確になっている」。

生産性を上げるためには、サプライチェーンの改革が欠かせない。キャディはそこに目を付け、デジタル技術やAIを駆使した取引コストの低減に取り組んでいる。その過程で生まれたのが前述のCADDi DRAWERだった。もともとの調達支援ビジネスでは、半導体不足などを背景に調達難に悩む企業からの引き合いも強い。2023年2月にはアメリカへの進出も発表。業績は急拡大している。

業績の拡大に伴って、社内体制も急ピッチで増強させている。2022年は300人以上を採用。現在の社員数は550人程度で、半分以上の社員が直近1年以内に入社したことになる。

「なんでもデジタルになればいいわけではない。人がそれ以上のことをできるようになることが大事だ」。製造業の理想の未来について、加藤氏はこう語る。家電や液晶、半導体などで負けてしまった日本勢でも、なお競争力を持つ分野はまだまだある。世界で生き残るには、こうしたDXによる地道な改善がカギを握ると言えるかもしれない。

高橋 玲央 東洋経済 記者

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たかはし れお / Reo Takahashi

名古屋市出身、新聞社勤務を経て2018年10月に東洋経済新報社入社。証券など金融業界を担当。半導体、電子部品、重工業などにも興味。

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