CFO出身社長が有力企業で続々と誕生している訳 会計が得意であれば立派な経営者になれるのか

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ところが近年、決算会見でおなじみになっていたCFOが、CEO、社長などに就任するケースが珍しくなくなってきた。ひと昔前までは、(女性役員が増えている現在、不適切な表現かもしれないが)財務担当役員はトップの「女房役」だった。

厳密にはCFOとはいえないが、経営史に名を残す「女房役」「相方」は少なくない。財務だけでなく広範囲にわたりトップを支えた。古くは、松下幸之助氏(松下電器産業=現・パナソニック創業者)の番頭役を長年務めた高橋荒太郎氏、本田宗一郎氏(ホンダ・創業者)が実印まで渡し、技術以外のすべてを任せていた藤沢武夫氏(元・副社長)などが相当する。ソニーもコ・ファウンダー(共同創業者)である井深大氏が技術を主導し、盛田昭夫氏がその他の多岐にわたる分野をカバーしていた。

彼らは、あえてしゃしゃり出ることもなく、黒子に徹していることを美学にしていた節がある。広告塔的な役割を果たしたソニーの盛田氏でさえ、年上の技術者である井深氏をいつも立てていた。ところが、今や、CFOは「女房役」ではなく、企業の顔になってきたのだ。

間接金融から直接金融へと移行したことで起きた変化

その背景には、次の要因がある。

バブル経済崩壊前夜の1990年代前半までは、銀行をはじめとする金融機関から融資してもらう間接金融が中心だった。地価は上昇するものと疑わない土地神話があったので、金融機関は土地を担保に企業に融資していた。

ところが、バブルの崩壊で、土地の価格は一気に下落。そのため、金融機関は、貸し倒れに対する警戒心が高まり、リスクが高い融資は避けるようになった。こうなると、ベンチャー企業だけでなく大企業に対しても、大きな投資を必要とする割にはリスクが大きい事業への融資には、金融機関が二の足を踏むようになる。その結果、企業は株式市場をはじめとする直接金融に活路を見いだすようになった。

間接金融中心の時代においては、財務担当役員が金融機関との関係性を良好に保つことが大きな役割だったが、資金調達の主軸が市場から資金調達する直接金融へシフトすると、銀行に対して説明していたような財務状況、財務計画の説明だけでなく、全社的な経営戦略と財務戦略を連動させ、投資回収の効果(リターン)を投資家に詳しく説明しなくてはならなくなった。そのため、CFOはトップに準じる、もしくは、同等の「経営全般に関する情報と知識」が求められるようになってきた。

そこで生じたトップ人事の発想が「CFOを社長に」である。しかし、現実的にはCFOがトップになっていなくてもうまくいっているケースは多々見られる。ソニー(現・ソニーグループ)の平井一夫・前CEO時代がその典型である。

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