CFO出身社長が有力企業で続々と誕生している訳 会計が得意であれば立派な経営者になれるのか

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筆者も数々のオンライン会見に参加、視聴しているが、そこで、リアルな会見とは異なる2つの点に気づいた。

1つは、質疑応答方法の変化だ。質問をする記者やアナリストは、事前登録した人が電話で質問し、それに企業側の出席者が答えるという形式がほとんどである。そこでは、リアルな会見ほど、丁々発止のやり取りが見られなくなった。そのためか、文章で書いたような文言の質問、返答となり、結果、記者・アナリストから、より突っ込んだ鋭い質問が少なくなったように思われる。

もう1つは、細かな表情の変化が見えにくくなったことだ。オンライン会議システムで接続されたパソコンをはじめとするIT機器のディスプレイには、能面のようなこわばった顔が映し出される。特にこの傾向が顕著なのが決算会見である。

株主重視経営が叫ばれるようになってから、短期間の変化が求められるためか、3カ月ごとに業績結果とその後の見通しを発表する「四半期決算発表会」が上場企業の間で定着した。一方では、短期的視点の経営が望ましくない、決算発表に関わる作業が煩雑になり業務に支障をきたす、などの理由から、四半期決算発表をやめる企業も一部で見られるようになってきた。だが、いわゆるグローバル対応のためか、今も行っている企業は多い。よって、3カ月ごとに、表情が乏しい出席者の顔を眺めることになる。

決算会見で話している登壇者がCFO

もっとも、決算発表会は精緻さが最も重視される。「会計は経営の言語」(御手洗冨士夫キヤノン会長)であることから、財務会計を公開する決算発表会では、説明に会計用語と数字が飛び交う。それをおもしろおかしく話していては、精緻さに欠ける、ふざけている、と捉えられかねない。当然、まじめな顔で話すことになる。それゆえ、表情が乏しいように見られてしまうのは仕方ない。

では、決算発表会で無表情な顔で抑揚のない話し方をしている登壇者は誰だろうか。その主役は、CFOである。ひと昔前は、財務担当役員(取締役)と呼ばれていた、当該企業における企業会計のプロフェッショナルである。

そして、CFOの隣には、部下である財務部門の管理職、ときには経営企画、経営戦略、広報担当の役員などが座る。司会をするのは、広報部門でもIR(投資家向け広報)担当を務めている人であることが多い。重大な発表事項がない限り、四半期決算にはほとんど会長、社長といったCEOが顔を出すことはない。

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