批判多い英「不法移民法案」欧州各国が注視する訳 小型ボートを使って不法入国する移民が急増

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スナク英首相とマクロン仏大統領
3月10日に会談したイギリスのスナク首相(右)とフランスのマクロン大統領(写真:ブルームバーグ)

イギリスのリシ・スナク首相は、スエラ・ブレーバーマン内相とともに3月7日、過去に前例のない厳しい不法移民法案を発表した。批判覚悟の厳しい措置が含まれていることから、「あらゆる措置を講じてきたが効果はなかった」と付け加えた。想定したとおり、野党・労働党は強く反発しただけでなく、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)も懸念を表した。

その法案の中身は、非正規ルートで入国を試みた者は二度とイギリスには入国できないことや、不法入国した者は身柄を28日間収容所で拘束され、その後、イギリスが協定を結ぶアフリカのルワンダなど安全が確認される第三国に強制送還するというものだ。

これまでは犯罪組織の密航業者に高額を支払い、小型ボートなどを使って命を落とすリスクを覚悟で英仏海峡を渡る行為が横行していた。そこでイギリスは正規ルート以外の難民・移民申請をいっさい認めない法案を打ち出すことで、危険を伴った入国を事前に食い止めようとしている。

英仏海峡を小型ボートで渡る密入国者が急増

イギリスに非正規ルートで密入国する人の多くはイラン人、アフガニスタン人、インド人、さらにはアフリカのエチオピア人、エリトリア人など英語圏が多い。また近年はベトナム人などアジアからの無謀なイギリスへの渡航を試みる者も少なくない。

政府の統計によると、英仏海峡を小型ボートで渡ってくる密入国者たちは、2018年には300人程度だったが、2022年には4万5000人を超えた。イギリスへの密入国の手段はコロナ禍の前まではコンテナトラックが5割を超えていたが、今では小型ボートでの密航が5割以上になり、これが、今回の不法移民法案(ストップ・ザ・ボート)につながった。

では、なぜ多くの不法移民がフランスやドイツではなく、イギリスを目指すのか。

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