批判多い英「不法移民法案」欧州各国が注視する訳 小型ボートを使って不法入国する移民が急増

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実はイギリスは産業革命以降の発展を移民が支えたこともあって、伝統的に移民に寛容な国だ。難民認定比率は39.8%(日本は0.3%)と先進国で断トツに高い。人道主義に加えて、フランスやドイツのようにガチガチの社会福祉国家の管理社会でないこともあって、当局の管理が甘いとされ、自由度が高いことも魅力になっている。

イギリス政府はホームページで「2015年以来、私たちは過酷な状況からの避難を求めた約2万5000人の男性、女性、子どもたちを英国に定住させた。これはヨーロッパのどの国よりも多い数だ」と人道支援国家としての実績を強調している。

批判したリネカー氏はBBCのサッカー番組を一時降板

新不法移民法に対しては、野党・労働党をはじめ、イギリス国内から批判の声が上がっている。

サッカー元イングランド代表でJリーグでもプレーした経験を持つギャリー・リネカー氏は移民法を強く批判したことから、自身が司会を務めるBBCのサッカー番組を「公平性を欠く」との理由で一時降板させられた。

同氏は自身のツイッターで、法案を提示したブレーバーマン内相の動画の中の発言に対して「1930年代のドイツが使用していた言葉と変わらない」と述べたが、今でも彼の発言への支持者は増えている。BBCは火消しに躍起だ。

また、国連の難民高等弁務官事務所(UNHCR)は、法案は「亡命禁止」に相当すると強い懸念を表明した。ブレーバーマン氏は、保守党議員に宛てた書簡の中で、法案が欧州人権条約(ECHR)に適合しない可能性は「50%以上」だとしている。EUも「国際法違反」と懸念を表し、ヨーロッパ全体の移民政策を揺るがす法案と反発している。

実はイギリス政府は昨年、フランスのジェラルド・ダルマナン内相にフランスの海岸を離れる前に不法移民を食い止めるよう要請し、昨年11月協定に調印。沿岸の取り締まり強化のパトロール隊員増強などでイギリス側は7200万ユーロ(約104億円)を拠出した。

しかし、英国への密航者は減る様子がなく、フランス側の漁師たちは何度も沈むボートから不法移民を救出している。それでも昨年12月15日には凍りついた海で4人の密航者が命を落とした。

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