批判多い英「不法移民法案」欧州各国が注視する訳 小型ボートを使って不法入国する移民が急増
スナク氏は3月10日、フランスのマクロン大統領とパリで会談し、不法移民阻止で協力を求めた。フランスに新しい不法移民収容所を建設する費用やフランスから海峡に漕ぎ出すボートを防ぐために追加の警察による取り締まり強化資金を提供するために、向こう3年間で約5億6400万ユーロ(約810億円)を供与することで同意した。
イギリスの調査会社による世論調査では、政治の優先課題について経済、医療に次いで3位に不法移民対策が入り、保守党支持者の40%、労働党支持者の31%が不法移民新法を支持している。スナク氏は今回の移民法の発表の際、「戦う準備はできている」と述べ、法案成立に意欲を見せた。
だが、スナク氏の政権基盤は盤石とは言えない。前述の世論調査でスナク政権への信頼度は3割強だ。国民には前財務相であったスナク氏の経済通の能力に期待する声もある一方、2023年の経済成長見通しはマイナス0.8%とされており、国民生活の悪化は避けられないと予想されている。
ちなみにEU内でイギリスの新移民政策を支持しているのは、移民排除を政策に掲げる極右政党やポピュリズム政党が大半だ。イギリス国内では民族主義、差別主義と同等と捉える声もあり、イメージダウンにつながっている。保守党内にも「実行不可能な懸け」という意見も出ている。
移民への対応に頭を悩ませるヨーロッパ
移民問題はイギリスにかぎらず、ヨーロッパ全体の問題だ。シリアやイラクの紛争で大量の難民・移民が押し寄せ、ドイツだけでも100万人を受け入れた。とくにフランスでは2015年以降、イスラム過激派のテロリストたちが国を頻繁に出入りし、国内テロにもつながった背景もある。
イギリスでは難民・移民が国の公共サービスを受けることで、財政負担が増していることに不快感を持つ国民が増えている。今回の法案には難民・移民認定の1年間の人数制限を設けることも盛り込まれ、難民・移民急増に効果的なブレーキをかける政策と、政権はアピールしている。
イギリス政府は、移民の認定において国へ貢献するスキルをもっているかどうかを条件としており、EUの大国も同じ方向だ。密入国者の大半はその条件を満たしているかどうか怪しい。無論、イギリスに非正規ルートでたどり着く人々には犯罪者やテロリストも混じっているが、不法移民の人権を無視した対応も問題視されている。
ロシアのウクライナ侵攻によって、ヨーロッパに逃れたウクライナ人は810万を超える。戦争の長期化で新たな対応にも迫られている。法案が成立すればEUの極右勢力が
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