8000系は現在、8両編成が10本在籍する。特急のほか、通勤通学・帰宅時間帯の全車両座席指定「ライナー」列車、京橋―七条間をノンストップで走る快速特急「洛楽」としても活躍する。
ゴールドのドアが一際目を引く京都側から6両目の6号車は「プレミアムカー」。専属アテンダントが乗務する有料座席の特別車両で2017年に登場した。車内には前後の間隔が広いリクライニングシートを1+2の3列で配置。テーブルと電源コンセントを備え、ビジネスと観光両方の需要に対応する。
全席指定で淀屋橋―出町柳間の料金は500円。8000系で人気を得たプレミアムカーは、2021年1月以降、同じく特急の運用を担う「3000系」にも導入された。
ただ、8000系の持つ特別感はプレミアムカーばかりでない。各車両に2つあるドアの間は進行方向を向いた2人掛けのクロスシートが並ぶ。車内は中吊り広告がなくすっきりとした印象だ。連結部分に近い車端部は窓を背にしたロングシート。背もたれが高くヘッドレストが付いており、「日本一豪華なロングシート」を目指したという。その一部は優先席になっている。車両間の通路のドアは自動で開閉する。
8両編成のどの号車のどのあたりに座るかによって車窓の眺めなど乗り心地に違いがあり、利用者の選択肢が広い車両と言える。先頭車の運転席越しの前面展望のほか、4号車ではダブルデッカー(2階建て)ならではの高い目線で車窓が楽しめる。このような贅沢な仕様の座席でも、プレミアムカー以外なら特別な料金は不要。例えば淀屋橋―三条間は大人1人420円の運賃だけで乗車できる(2023年4月1日以降「鉄道駅バリアフリー料金」が10円加算)。
手はかかるが「よく走る」
日頃のメンテナンスなどで8000系に携わる京阪電車の車両部の社員にとってはどんな存在なのか。車両サービス課で車両指令長を務める田辺尚久さんは「ちょうど私が入社したときに導入されたので親近感がある」と話す。メンテナンスでは「座席などに汚れが付かないように養生するなど細心の注意を払っている」という。
技術課(機械設計担当)のスタッフリーダー、北川順一さんも「ダブルデッカー車やプレミアムカーのカーペットは安全靴の油汚れが付着しないように、パーティションは道具類があたって傷がつかないように気を配る」と明かす。さらに「見た目は同じ8000系でも編成の導入時期などによってブレーキを緩めたときの音が違う。そこまで聞き分けて乗られている方がおられるかわかりませんが」と教えてくれた。
プレミアムカーの改造にかかわった車両課(管理担当)の係長、林淳一さんは「お客さまから『京阪電車が好きだ』と言ってもらえるのはありがたいことで、30年以上走り続けている8000系がそれを象徴している」とみる。3人は「ほかの通勤車両と違い朝から晩までよく走る車両。京阪を代表する看板列車で、子どもたちが書いてくれる絵も8000系が圧倒的に多い」と口をそろえる。
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