新日鉄住金、報告書に浮かぶ連続事故の真因 なぜ1年間で5度もトラブルが起きたのか

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事故を踏まえ、図中の赤枠のような改善策が取られる(新日鉄住金の資料から抜粋)

この時は大事に至らなかったためか、新日鉄住金は事故を対外的に公表していない。ただ、名古屋製鉄所では本件を踏まえ、DAPS炭の貯蔵期間は3日以内とする「暫定基準」を定めた。

ところが昨年9月の事故では、この暫定基準が守られていなかったことが、被害を拡大させる原因となった。2013年のトラブルの教訓はなぜ生かされなかったのか。新日鉄住金は「暫定基準はきちんとマニュアルにまで落とし込まれておらず、(現場での)情報の共有が不十分だった」と認めている。

このように、コスト削減のために導入した設備が思わぬ発火原因を招いてしまったことに加え、2013年の事故の教訓を周知できなかった人的要因があったことが、報告書から読み取れる。

同社は今回の事故を踏まえ、貯蓄槽への投入温度は60度とし、3日以内に全量をコークス炉へ投入するという基準を作った。さらに、DAPS設備や貯蓄槽内での温度管理を厳格化するため、感知設備や散水設備を増設する。また、管理体制の強化として、防災推進部の設置やリスクに強い管理職の育成なども進めるとしている。

新日鉄住金に課された宿題

新日鉄住金は今回の報告書公開に先立つ3月3日に、中期経営計画を発表。国内事業基盤の整備を掲げ、従業員の採用を従来より600人増やし、1300人程度とする、設備の改修などにかける設備投資を1000億円上積みする、などの方針を打ち出した。

事故対策委員会の委員長を務めた持田勲・九州大学名誉教授は、報告書の「おわりに」でこう書いている。「今回の事態を全社を挙げて真摯に受け止め、これまでの取組みをさらに強化し、努力を継続していく必要がある。(中略)再度同様の事故が発生すれば名古屋製鐵所の存立にも関わりかねないとの危機感を持っております」。

新たな中計で地域や取引先からの信頼を取り戻せるか。新日鉄住金にとって大きな宿題が残されている。

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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