くら寿司、迷惑客逮捕への「声明」にちらつく懸念 迷惑客にすら配慮したスシローとの「大きな違い」

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では「強気の対応」は、どの企業にとっても「広報対応の勝利の方程式」と言えるものなのだろうか。「強気の広報対応」は、一般的には裏目に出ることのほうが多い。

例えば2014年のマクドナルドが使用期限切れの鶏肉を使っていた問題。発覚後も社長は約10日も謝罪会見を開かなかった。会見を開いても「マクドナルドは騙された」と責任転嫁のような発言を繰り返し、信用は完全に失墜した。この年の売り上げは約4割も減少、過去最悪となる218億円の赤字を計上した。

同じ年の2014年、当時の小渕優子経産大臣の政治資金疑惑も「強気の対応」が仇となった例だ。家宅捜索で押収されたパソコンのハードディスクがドリルで穴を開けられていたことが判明。証拠隠滅を小渕大臣は否定しているが、事件から10年近く経った今でも、ネットでは「ドリル優子」と揶揄されている。国会での追及再燃を恐れてか、どの総理もいまだに大臣に再任しようとしない。

強気の広報対応が「必勝の方程式」であり続けるには

さて、くら寿司を巡る週刊文春の追及。もし、自殺した店長の遺族やパワハラを受けたという従業員が、実際にくら寿司を告訴したとしたら、どうなっていただろうか。

「告訴したという事実」を、各メディアは一斉に報じることができる。それでも強気の姿勢を貫けば「反省の姿勢がない」と、さらにバッシングが広まる。炎上に乗ろうとして、「パワハラの証拠」の映像や音声をSNSで公開する元従業員やアルバイトも現れるかもしれない。

実際に告発者が裁判に訴えるなどの「あと一歩」を踏み込めなかったのは、裁判費用を用意できない、あるいは証拠不十分など「何らかの事情」があったからか、そもそも、くら寿司の主張のほうが正しかったからなのか。そのどちらかしかないが、第三者からは窺い知ることはできない。

ただ想像できるのは、週刊文春は「今でも」くら寿司への追及を狙っているということだ。記事やコラムの文面の至るところから、くら寿司の「強気の対応」に対する、強い憤りが感じられるからだ。

「強気の広報対応」が「必勝の方程式」であり続けるには、「自社に何も瑕疵がない」状態を守り通すことが絶対に欠かせない。

強気のくら寿司と、きめ細かい対応のスシロー。今後、報道やネット世論はどのように転じていくか。私も元記者、そして現在は広報PR戦略コンサルタントにある身として、「対照的な広報対応の事例」を静かに見守っていきたい。

【2023年3月13日14時30分追記:初出時、記事冒頭の写真下のキャプション表記に謝りがありました。「スシロー」→「くら寿司」と修正しました】

下矢 一良 PR戦略コンサルタント

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しもや いちろう / Ichirou Shimoya

早稲田大学理工学部卒業。テレビ東京に入社し、『ワールドビジネスサテライト』『ガイアの夜明け』を経済部キャップとして制作。スティーブ・ジョブズ氏、ビル・ゲイツ氏、孫正義氏、三木谷浩史氏、髙田明氏、藤田晋氏、前澤友作氏らにインタビュー。その後、ソフトバンクに転職し、孫正義社長直轄の動画配信事業(Yahoo!動画、現・GYAO)を担当。「ソフトバンク・アワード」を受賞。現在はPR戦略コンサルタントとして中小企業のブランディングや宣伝のサポート等を行う。

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