くら寿司、迷惑客逮捕への「声明」にちらつく懸念 迷惑客にすら配慮したスシローとの「大きな違い」
こうした週刊文春の追及に対して、くら寿司の広報対応は実に強気だ。一連の疑惑追及に対して、くら寿司は公式にはいっさいコメントしていない。週刊文春の編集長コラムには、くら寿司への取材で感じた憤りが綴られている。
「くら寿司に事実確認の取材を申し入れたところ、3時間で回答が来ました。『パワハラはない』というのです。通常、こうした事実確認には時間がかかります。パワハラは、“加害者”が否定することは少なくありません。周囲の従業員などの調査を完璧にしたうえでの否定だったのか。小誌の取材結果と明らかに食い違います」(週刊文春・編集部コラム 第56回)
なぜ、週刊文春に他のメディアが続かなかったのか
週刊文春の「くら寿司への追及キャンペーン」だが、大して広がらなかった。私が報道記事のデータベースで調べたところ、主要紙やテレビでの「後追い報道」は皆無。SNSを見ても、それほど拡散してはいない。
なぜ、週刊文春に他のメディアがまったく続かなかったのか。その理由は「不確かなことは、報じられない」からだ。くら寿司と週刊文春の言い分はまったく異なる。どちらが正しいのか、第三者からは窺い知ることができない。
先日、私が解説した「串カツ田中『炎上劇』対応がマズいこれだけの理由」。このときも、串カツ田中の炎上劇がテレビや新聞で報じられたのは、公式謝罪の「後」だ。ネットに上がった従業員の告発が事実かどうかは不明なので、それだけではメディアは報じるわけにはいかない。だが、会社の公式な謝罪があれば、その「謝罪の事実」によって、報じることができるからだ。
「報道機関なのだから、公式発表を待たずに自分で取材すべきではないか」という指摘はもっともだ。だが、同じ調査報道に取り組むのであれば、どうせなら「ネットや週刊誌の後追い」ではなく、「自分が一番手になれる案件」に労力を注ぎたいというのは、事の是非はさておき、記者の自然な感情だろう。
つまり、くら寿司は「強気な対応」を貫いたことで、週刊文春の8週にも及ぶ「糾弾」の拡大を封じ込めることに成功したのだ。
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