一般人のスマホ普及が変えたニュースの映像事情 「その瞬間」の映像がSNSで拡散、一方でリスクも

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スマートフォンのリスクとしては、政治家や財界人が「オフレコ」のつもりでうっかり放言をしてしまうと、鞄やポケットの中のスマホで録音や録画をされているというリスクも生じている。ある女性政治家が秘書に暴言を吐いている音声がメディアを騒がせたこともあった。さらには偶然居合わせた人が何気なく手に持っているスマホで隠し撮った芸能人のスキャンダルが明るみに出るというケースもある。

小さなスマホでは、撮影ボタンが押されているのか、よほど気をつけなければわからない。同様に投稿者がスマホで撮影した素材も、映り込んでいる人が取材を受けていると理解していなかったケース、テレビで放送されるとは予期していないケースもある。放送に際してはそのスクープ性の高さや公益性を踏まえても、十分に撮影されている人への配慮を行うことも必要だ。

インパクト強い「告発型映像」が抱えるリスク

このような機動性の高さから、「告発型映像」としてスマホ撮影による素材が世の中に出てくることも珍しくはなくなった。ただ、インパクトは強いものの、誰かを追い落とす目的で撮影されたものは、双方の言い分をきちんと取材しなければ、そのインパクトだけで善悪のレッテルを貼ることにつながりがちである。だからこそ慎重な裏付けと当事者取材をすることが必要で、双方の見解を含めずに伝えることはできないものだと考えている。

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告発型の動画に安易に乗ることなく、冷静に対応しなければ「動画センセーショナリズム」にメディアが利用されてしまう。そこが公共メディアとネット投稿の重要な境でもある。

スマートフォンは動画の撮影ができるのみではない。スマホの中に「簡易中継」をできるアプリをインストールすれば、かつてのように大きな中継車が到着して、何本ものケーブルをつなぎ合わせなくても、簡単に世界中から瞬時に中継を行うことができるようになった。

記者なりディレクターなりが1人で現場に急行、あるいは現場に居合わせた際には、スマホで撮影をし、さらには中継まで行えるようになった。こうなると、ライブ(生)の映像も爆発をしていると言える。

このケースでも同様で、その場にいる人はまさかスマホから全国ニュースで中継をされているとは思わないケースもあるだろう。やはり撮影の許可や周囲の人への配慮なども、瞬時に判断することが必要になる。

大野 伸 日本テレビ放送網「news every.」前統括プロデューサー

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おおの しん / Shin Ono

早稲田大学パブリックサービス研究所研究員、早稲田塾講師、日本メディア学会会員、sweet heart project(障がい者自立支援プロジェクト)アドバイザー。1996年に日本テレビ放送網入社。報道局に配属になる。2008年から経済部デスク兼ニュース解説者として「news every.」「スッキリ」「NEWS ZERO」などでスタジオ解説、ラジオ日本の朝の番組「岩瀬惠子のスマートNEWS」での解説など。2013年に営業局へ異動。2016年より報道局にて「Oha!4 NEWS LIVE」プロデューサー、2018年12月から2022年5月まで「news every.」統括プロデューサーを務める。早稲田大学大学院政治経済学術院公共経営研究科修了(公共経営修士)。

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